「手を上げろ」 ガザ最大病院に突入のイスラエル軍
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【11月15日 AFP】数十人でなだれ込んできたイスラエル軍兵士が、拡声器を使って「16歳以上の者は手を上げろ」とアラビア語で叫んだ。顔を目出し帽で覆った兵士や、威嚇射撃する兵士もいた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)最大のシファ(Al-Shifa)病院に突入した。院内には患者や医療従事者、避難民など数千人が残っているとされる。
数日前に同院内へ避難し、AFPと連絡を取り続けているジャーナリストによると、イスラエル兵は人々に「建物から中庭へ出て、降伏しろ」と命じた。
イスラエル軍は、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマス(Hamas)がシファ病院の地下を司令部として使い、武器も保管していると主張。病院への攻撃は「精密で標的を絞った」作戦だと発表した。
イスラエル、パレスチナ双方の当局によると、ここ数日でイスラエル軍はガザ北部にあるシファ病院を包囲し、昼夜を問わず激しい攻撃を浴びせている。周辺も空爆されており、10日には病院自体が砲撃を受け、13人が死亡した。
目撃情報によると、院内は凄惨(せいさん)な状況で、麻酔なしで医療処置が行われ、食料や水も乏しく、避難家族が廊下にあふれ、遺体の腐敗臭が充満している。
前述のジャーナリストは、イスラエル兵が廊下を走るとあちこちの病棟から数百人の若者が出てきたと語った。兵士たちはハマスの戦闘員を探して部屋から部屋へ移動しながら、威嚇射撃を繰り返したという。
■病院敷地内に戦車
また広大な病院の敷地内には、数台の戦車が入ってきているという。
イスラエル軍は声明で、作戦実施中に保育器、離乳食、医療品などを病院に届けたと発表。「これらの物資を必要とする人々に確実に届くよう、われわれの医療チームとアラビア語を話す兵士が現場にいる」と述べた。
だが、ハマスが運営するガザ当局は、病院で戦闘員を捜索するイスラエル軍の行為は「戦争犯罪と人道に対する罪」に相当すると非難している。
一方、米ホワイトハウス(White House)は、ハマスとパレスチナの別の武装組織「イスラム聖戦(Islamic Jihad)」がシファ病院の地下に作戦用の「指揮統制司令部」を設けたとするイスラエル軍の主張を米情報筋が裏付けたと発表した。
しかしハマス側はこれらの疑惑を否定。ガザ地区は数週間にわたってイスラエル軍に包囲されており、電気も発電機用の燃料もないとして病院内の窮状を強調している。
国連(UN)は病院内に少なくとも2300人の患者、職員、避難民がいるが、戦闘が激しく脱出できない恐れがあると警告している。
国連人道問題調整事務所(OCHA)はガザ保健当局のまとめで、14日に同病院で患者40人が死亡したと発表した。
ムハンマド・アブサルミヤ(Mohammad Abu Salmiya)院長は、これまでに計179人の遺体が敷地内の集団墓地に埋葬されたと述べている。(c)AFP