【10月31日 AFP】イスラエルのギラド・エルダン(Gilad Erdan)国連(UN)大使は30日、国連安全保障理事会(UN Security Council)での演説で「黄色い星」を着用した。これを受けて同国のホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)記念館「ヤド・バシェム(Yad Vashem)」は、直ちに批判した。

 黄色い星は、ナチス(Nazi)支配下の欧州諸国で起きたユダヤ人迫害の象徴となっている。エルダン氏は、安保理がイスラム組織ハマス(Hamas)の「残虐行為」を糾弾するまで外さないと主張。これに対しヤド・バシェムは、黄色い星ではなくイスラエル国旗を身に着けるよう促した。

 エルダン氏は30日の演説で、ハマスによる7日のイスラエル襲撃について安保理が「沈黙を守っている」と批判。「あなた方の中には、過去80年間何も学ばなかった人もいる。なぜこの機関が設立されたのかを忘れてしまった人もいる」と指摘した。

 ハマスの奇襲に端を発した紛争が始まってから3週間以上が経過したが、15理事国から成る安保理は分断を深めており、問題に関する決議は一つも採択されていない。

「だから私が皆さんに思い出してもらう。きょうから私を見るたびに、悪を前にして沈黙を守ることが何を意味するかを思い出すだろう」と述べたエルダン氏は、立ち上がって黄色い星を胸に着け、「私の祖父母、そして何百万人ものユダヤ人の祖父母がそうしたように、代表団と私は黄色い星を着用する」と表明した。星には、英語で二度と繰り返さないという意味の「Never Again」という文字が書かれていた。

 エルダン氏はさらに、この星を「誇りの象徴」として身に着け、「あなた方が目を覚まし、ハマスの残虐行為を糾弾するまで外さない」と誓った。

 これを受けて、ヤド・バシェムのダニー・ダヤン(Dani Dayan)館長はX(旧Twitter)にヘブライ語で投稿し、「遺憾」の意を表するとともに、「この行為はホロコーストの犠牲者とイスラエルという国家を侮辱するものだ」との認識を示した。

 その上でダヤン氏は、「黄色い星は、ユダヤ人が無力であり、他者に生殺与奪の権利を握られていたことを象徴するものだ。われわれには今、独立国家と強力な軍隊がある。自らの命運を決めることができる。きょうわれわれが襟元に着けるのは、黄色い星ではなく青と白の旗だ」とつづった。(c)AFP