【10月30日 AFP】負傷者であふれるパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)南部ハンユニス(Khan Yunis)の病院で働くマフムド・アスタル医師(34)は、戦闘開始3日目に姉一家が全員死んだことを知った。

 勤務先のナセル(Nasser)病院でAFPの取材に応えたアスタル医師は「遺体安置所に行くと、焼け焦げてばらばらになった姉の遺体があった」と語った。

 共に40歳の姉とその夫、そして6歳から13歳の子ども4人は空爆で一緒に亡くなった。

 ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマス(Hamas)は今月7日の越境攻撃で、イスラエル人約1400人を殺害した。これを受けイスラエルは報復攻撃を開始。ガザ地区ではこれまでに子ども約3000人を含む7300人以上が殺されたとされる。

 アスタル医師は「姉が死んでから悪夢が頭を離れない。自分の子どもたちもばらばらになって病院に運び込まれるのではないかと想像してしまう」と話す。

「子どもたちはいつか旅に行きたいと夢見ている。でも、この戦争を生き延びられるか分からない」

 しかし、悲しみに打ちひしがれながらも「負傷者を救うために働く以外の選択肢はない」と決意を語った。

 ナセル病院の救急部門で働くワラー・アブムスタファ(33)医師は27日、病院に搬送されてきた空爆の犠牲者「数十人」の中におば夫婦とその15歳の息子がいたことを知った。

 おばと子どもは到着時に既に亡くなっていた。おばの夫は負傷が元でその後、病院で死亡した。

「ばらばらになったいとこの体は布にくるまれた状態で運ばれてきた」「おばは母親のような存在だった」と涙をこらえながら語った。

「私の責務でもあるし、医者の数も足りていない」。アブムスタファ医師も働き続ける覚悟だ。

 ナセル病院の呼吸器専門のラエド・アスタル医師は23日、パニック状態の妻から自宅の向かいが爆撃されたとの電話を受け取った。

 負傷者らが運び込まれた救急部門に向かうと、犠牲者の中に親族がいた。

「おばとその夫、二人の子どもたち、そしていとこの妻も死んだ」と話した。

「どの町にも、どの通りにも、どの家にも、あらゆるところに死臭が漂っている」 (c)AFP/Adel Zaanoun