【10月28日 東方新報】中国では今年の国慶節連休(9月29日~10月6日)に多くの市民が観光旅行に出向いた。旅行会社のビッグデータによると、満足度の高かった観光地として多く挙げられたのは「胡楊林」だった。

 胡楊はいわゆるポプラの仲間で、和名ではコトカケヤナギと言われる。乾燥に強く、砂漠地帯でもたくましく成長する。樹高は通常10~18メートルあり、直径は大きいもので1メートルを越す。

 具体的には、内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)のアルシャー盟(Alxa League)エジン旗(Ejina)(盟、旗は自治体の単位)の胡楊林やアルシャン国家森林公園、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のアクス地区(Akesu)シャヤール県(Xayar)の胡楊林やタリム胡楊林国家森林公園などが人気を集めた。

 胡楊林は、秋の深まりとともに砂漠の街を鮮やかな黄葉で染める。中国では都会の喧噪(けんそう)でストレスをためた市民が郊外の豊かな自然の地域へ旅行する傾向が高まっており、見渡す限り胡楊林が広がる壮大な景色は、観光客の目と心を癒やしている。

 黄葉の見ごろの期間は短いが、砂漠の街に住む住民にとっては大きな収入源になっている。エジン旗は内モンゴル自治区の旗で最も面積が大きく、上海市18個分の広さがあるが、人口は最も少ない3万人。1平方キロに0.3人しか住んでいない計算だ。大きなホテルもなく、10月の観光シーズンには住民が民泊で観光客を受け入れ、1万元(約20万円)の副収入を得る。

 中国のことわざで胡楊は「生まれて1000年死なず、枯れて1000年倒れず、倒れて1000年腐らず」といわれ、「3000年ポプラ」の異名を持つ。シルクロードの要所として紀元前から栄えた楼蘭王国の遺跡を発掘すると、砂漠の都市にもかかわらず多くの木材が使われていたことが明らかになっている。その建築材に用いられたのが胡楊だった。

 かつては砂漠の王国を支え、今は観光客の心を和ませ、住民の生活に潤いをもたらす。「3000年ポプラ」は、悠久の歴史の中で人間の暮らしを見守り続けている。(c)東方新報/AFPBB News