【10月27日 東方新報】中国南部・広東省(Guangdong)の渡り鳥自然保護区で10月前半、絶滅危惧種のカンムリアジサシ(ヒガシシナアジサシ)の姿が撮影された。カンムリアジサシは中国で国家1級保護動物に指定され、生息数の激減で活動が確認されづらいため、「神話の鳥」とも呼ばれている。この自然保護区で確認されたのは2006年以来、17年ぶりとなる。同じアジサシ属のオオアジサシの群れに交じって活動しているという。

 世界には渡り鳥の飛行経路が9ルートあり、そのうち4ルートが中国を通過する。その中でも広東省はオーストラリアや西太平洋から東アジアへ向かう飛来ルートに位置する。毎年10月から翌年2月にかけ、10万羽近い渡り鳥が越冬地もしくは休憩地点として海を越えて広東を訪れる。

 中国を代表する経済先進地域である広東省は、実は多くの自然も擁している。省内の森林被覆率は53パーセントに上り、林業の規模は13年連続で全国1位。県級以上の自然保護区は1361か所ある。さらに省内で記録されている野鳥584種のうち、渡り鳥は約70パーセントの412種を数える。

 今年も10月11日に深セン河口で21羽のクロツラヘラサギが確認された。深セン湾と福田マングローブ湿地にはオグロシギ、アオアシシギ、アカサキシギ、シマアジなど、南沙湿地にはダイサギ、アオサギ、ムラサキサギ、ハシビロガモなどが飛来した。

 遠距離から撮影している高精細カメラでは、野鳥たちがエサを取り、ゆっくりと睡眠を取る姿が映っている。野鳥の「先遣隊」の到着に、愛鳥家たちも遠巻きに写真を撮影している。

 中国の急激な経済成長に伴い広東省でも環境汚染が懸念されたが、近年は水質検査を受けた地域の92パーセントが「優良」と判定され、大気中の微少粒子状物質(PM2.5)も改善が進んでいる。洋上風力発電などの再生可能エネルギーも取り入れ、石炭火力エネルギーが中心の電力構造を転換するけん引役になっている。久しぶりにカンムリアジサシの姿が確認されたことは、環境が改善した象徴と言える。

 広東省科学院動物研究所の張強(Zhang Qiang)副所長は「広東に長期間滞在する渡り鳥も多いため、生息環境の保護やパトロールの強化が必要」と強調する。人も渡り鳥も暮らしやすい自然を守るため、不断の努力が必要となる。(c)東方新報/AFPBB News