【10月26日 東方新報】中国の第7回国勢調査(2021年発表)によると、60歳以上の人口は2億6400万人を超えているという。さらに「中国高齢者社会追跡リポート」によると、60歳以上の人のうち、離婚や死別を含めた独身者は25~30パーセントに上る。高齢独身者の間ではインターネットを通じたパートナー探しが活発になっているが、さまざまな被害も報告されている。

 江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)の高齢女性は、直接会ったこともなければビデオ通話すらしたこともない相手に350万元(約7173万元)を送金してしまった。ほとんど現金を使わないキャッシュレス社会となった中国では高額のデジタル送金は珍しくないが、この額はやはり大きい。

 中国のインターネットで「シニアの婚活」「シニアのお見合い」「黄昏恋」といったキーワードを検索すると、多数のSNSのグループが登場する。南京市の女性もあるグループチャットに参加していると、毎日メッセージを送ってくる男に心が引かれ、結婚を決意。男から「財テクで結婚資金を増やしたい」と誘われ、350万元を送金してしまった。

 女性の娘・鐘(Zhong)さんが母親の異変に気づき警察に通報。この女性はそれでも「私の結婚を邪魔しないで」と娘すら遠ざけようとしたが、男と連絡が取れないようになり、ようやく詐欺に気づいたという。

 高齢者向けの会員制交流アプリも多くあるが、「サクラ」「仕込み」といった女性の問題も指摘されている。男性が特定の女性とビデオ通話などで交流を続けると、サイト側が「交流を継続したい場合は課金が必要」と要求してきたり、女性自身が「あなたの経済力と私への思いを知りたい」と高額のプレゼントを求めたりする。これはサイト側に雇われた女が男性をだましているか、人間ですらなく人工知能(AI)を使ったキャラクターが誘っていることもあり、課金やプレゼントで10万元(約205万円)以上支払ってしまった男性も少なくない。

 ネットを通じた婚活詐欺は今や珍しくないが、高齢者は特にだまされやすい傾向にあるのが特徴だ。日ごろSNSになじみがなく、恋愛・婚活のためグループチャットやアプリを利用し始めてみると、あっという間にのめり込んでしまう。そして被害に遭っても「いい年をして恥ずかしい」という気持ちが強く、周囲にすぐ打ち明けない。詐欺をする側にとっては格好の「カモ」と言える。

 もちろん、中国で展開されている高齢者向け婚活SNSの大半は犯罪と関係なく、実際に結婚につながったケースも数多い。また、最近はAIによる監視で「このユーザーは最近、頻繁に友達を追加しています」「相手のアカウントは詐欺の危険がありますので注意を」とリスク警告も送信されるようになっている。それでも被害は後を絶たないため、プラットフォーム側の管理強化や警察による摘発強化がより求められている。(c)東方新報/AFPBB News