【10月25日 東方新報】中国で9月1日、「バリアフリー環境建設法」が施行された。公共施設や道路、住宅を新設・改築する際にバリアフリーの基準を設け、誰もが住みやすい街づくりの整備を加速させる。

 道路の点字ブロックや信号機の音声案内、集合住宅でエレベーターやバリアフリー駐車スペースの設置などを進める。また、行政がウェブサイトやアプリの事業者に対して、障害者や高齢者が利用しやすくなるよう指導。文字や音を大きくする、通話内容を文字に自動変換する、ページを簡素化するなど、「情報のバリアフリー」を求めている。

 そんな中、都市部の公園でもバリアフリー化が進んでいる。江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)の中心部にある玄武湖公園は新たに「バリアフリー公園」となった。園内の通路に手すりと点字ブロックを設けたのをはじめ、40種類以上ある花を説明する音声ガイド、視覚障害者が花の形や匂いを感じられる「タッチ花壇」などを導入した。トイレや休憩所もバリアフリー化している。

 公園を散策している視覚障害者の李飛(Li Fei)さんは「以前は家族や友人を頼りにしていましたが、今は自分で公園の魅力を感じることができます」と笑顔を浮かべる。南京市の視覚障害者たちでつくるジョギンググループ「暗やみランナーズ」のメンバーは、晴眼者の伴走ランナーと共に、公園内を軽快に走っている。

 玄武湖公園のバリアフリー化は計画から実現まで3年を要した。設計を担当した公園設計会社の高級エンジニア・陳啊雄(Chen Axiong)さんは「設計にあたり、南京特別支援学校などに何度も足を運び、多くのアイデアを学びました」と説明する。陳さんは江蘇省無錫市(Wuxi)でもバリアフリー設計プロジェクトを進めており、「バリアフリーは社会の責任であり、私の設計を通じて多くの人の利便性と幸福感が増すことはこの上ない喜びです」と目を輝かせる。

 日頃の生活空間だけでなく、余暇を楽しむための施設のバリアフリー化が各地で進んでいる。

 上海市の辰山植物園には、視覚障害者向けの植物園が開設されている。毒性やトゲがなく、香りや形状がはっきりした植物を栽培し、視覚障害者が実際に植物に触れて楽しんでいる。神秘的な風景で知られる湖南省(Hunan)張家界市(Zhangjiajie)の渓谷・金鞭渓では長さ7キロのバリアフリー通路が完成した。

 人は誰しも年を重ねれば体が動きにくくなり、物も見えづらくなる。障害者や弱者に役立つ施設は、誰にとっても役立つ施設となる。(c)東方新報/AFPBB News