【10月17日 AFP】ガザ地区を実効支配するパレスチナのイスラム組織ハマス(Hamas)とイスラエルの戦闘が激化する中、イスラエルの商都テルアビブの東に位置するカフルカシム(Kafr Qasim)というアラブ系イスラエル人が主に居住する町は、不気味な静けさに包まれている。

 イスラエルが占領するヨルダン川西岸(West Bank)とイスラエルの間を主に通る分離壁に近い丘陵に位置する町には、イスラエルでは少数派であるイスラム教徒約2万5000人が住んでいる。

「私たちはとても、とても怖いです」と、アハラムという仮名を使うよう希望した38歳の地元の女性は語った。

 アハラムさんによれば、戦時中はアラブ系イスラエル人への敵意が高まる傾向がある。そして今回の戦争は、最初の6日間で数千人が亡くなるなど、最近の記憶に残る中では最も激しいものとなった。

 ハマス武装勢力は7日、イスラエルに対して史上最悪の攻撃を行い、少なくとも1400人を殺害、約120人を人質に取った。奇襲攻撃はイスラエルの攻撃を招き、ガザ地区でこれまでに少なくとも2670人以上の命が奪われ、ガザ地区への地上侵攻の可能性が高まっている。

「想像もできないようなことが起こるかもしれず、わたしたちは大変心配している」とアハラムさん。さらに、「私たちはどちらの側からも守られていない。パレスチナのロケット弾からも、私たちを真の市民として扱わずに尊重もしていないイスラエルからも」と訴えた。

■「ひどい嫌がらせ」

 アラブ系イスラエル人は、イスラエルが建国された際に自らの土地にとどまったパレスチナ人の子孫で、イスラエル国籍を保有している。失業率や貧困率、犯罪率は、イスラエルの他の地域よりも高い。人口の21%を占めている。

 過去数十年に及ぶイスラエルとパレスチナの紛争が激化した際には時に、アラブ系イスラエル人とユダヤ系イスラエル市民との間で衝突が起きたこともあった。

 アハラムさんは社会福祉士として働いており、自らのコミュニティーを支援したいと考えている。だが、「家を出るとき、子どもたちのことを心配してしまう」と話した。

 アハラムさんは、危機的な状況に見舞われる際には、ここに住む多くの人は深刻なアイデンティティーの危機に直面すると説明した。「私たちは教育、健康、仕事などすべてが国と関係しているところに住んでいる」と指摘する一方、「だが、パレスチナ人は私たちの同胞だ」と訴え、「自らをどのように位置付ければいいのか分からない」と複雑な胸中をのぞかせた。

 アハラムさんは、アラブ系イスラエル人として自由に話すことができないとも感じている。「ユダヤ人は自分たちの思いを自由に表現できるが、私がそのように発言すれば、ひどい嫌がらせを受け、私の言葉はゆがめられてしまうだろう」と語った。