【10月14日 AFP】ブラジルの熱帯雨林アマゾン(Amazon)の木々にくくり付けられている小型の人工知能(AI)機器は、ジャングルを破壊する侵略者と闘う研究者や環境保護団体の最新兵器だ。

 AI機器は、猟師や密猟者を食べるという言い伝えがある森の精霊にちなんで「クルピラ(curupira)」と名付けられている。プロジェクトマネジャーのティアゴ・アルメイダ(Thiago Almeida)氏によれば、箱にはセンサーと、「チェーンソーやトラクターの音をはじめ、森林破壊につながるあらゆる音を認識」するよう学習されたソフトウエアが内蔵されている。

「アマゾンでチェーンソーやトラクターの音を記録し、採集したすべての音をAIチームに渡してプログラムに学習させた。動植物や雨などの森特有の音以外のこうした音だけを認識できるようになっている」

 危険が探知されると、情報が本部に伝えられ、職員が派遣される。

 プロジェクトを実施したアマゾナス州立大学(Amazonas State University)の研究者、ライムンド・クラウディオ・ゴメス(Raimundo Claudio Gomes)氏は、衛星データでは伐採された後にしか突き止められないが、クルピラの強みは「伐採が始まった時」に「森への襲撃や脅威をリアルタイムで探知できること」だと説明した。

 センサーは小型モデムのように見えるが、人工衛星を通じて最大1キロ先にある他のセンサーまでデータを送ることができる。

 プロジェクトチームは、北部アマゾナス州の州都マナウス(Manaus)近郊の森林地帯で、試作品のクルピラ10台を木に取り付けた実証段階を終えたばかりだ。

 ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は、2030年までにアマゾンの違法伐採の根絶を打ち出している。極右のジャイル・ボルソナロ(Jair Bolosonaro)前政権下では、アマゾンの伐採面積の年平均が過去10年と比べ75%以上増加した。

 ゴメス氏によると、データ送信用の大型アンテナを必要としないため、プロジェクトの費用は比較的安価だ。箱に搭載されたセンサーの製造費は、1台約200~300ドル(約3万~4万5000円)だ。

 チームは現在、森林火災の煙や熱を検知するタイプなど、多数のセンサーをシステムに追加するための資金調達を進めている。

 映像は9月に撮影。(c)AFP