呂布の出身地が「世界シリコンの首都」に 中国・包頭市
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【9月29日 東方新報】「三国志」の豪傑、呂布(Lu Bu)は現在の中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)包頭市(Baotou)の出身として知られる。「人の中には呂布という傑出した勇者がおり、馬の中には赤兎という名馬がいる」との一節が有名だ。一日に千里を駆けるといわれた赤兎馬(せきとば)に乗って戦う呂布は、三国志に出てくる豪傑の中でも印象的だ。どこまでも広がる包頭郊外の草原を眺めていると、今にも赤兎馬にまたがった呂布がどこからか駆けてきそうだ。
近年、包頭は三国志の豪傑の出身地としてだけでなく、レアメタル(希少金属)の一種であるシリコンの産出地として注目されている。シリコンは日本語でケイ素と呼ばれ、主に半導体の材料として使われる。米国で半導体企業が集まるシリコンバレーの語源でもある。ウクライナ情勢の緊迫化で、ロシアやウクライナからのシリコンの供給不足が懸念され、世界的に半導体不足が起きたことは記憶に新しい。
半導体に使われるシリコンでは、「99.999999999パーセント」(イレブン・ナイン)という「超高純度の単結晶構造」が要求されるため、抽出後に各種の製造工程を経て精製される。シリコンの精錬には大量の電力が必要なため、日本では、電力の比較的安価な中国やオーストラリア、ブラジルなどから精錬された高純度の金属シリコンとして輸入している。
中国のシリコン生産量は、世界の生産量の66パーセントを占めており、包頭は国内最大のシリコン産地だ。人口約270万人の包頭市には、シリコンなどの精錬に必要な電力を供給するため、大規模な石炭火力発電所が建ち並ぶ。しかし、近年は環境への配慮から太陽光や風力エネルギーへの転換が進められているという。
今年5月23日に上海市で開催された国際太陽光発電・知能エネルギー会議では、包頭市に「世界グリーンシリコン首都」の称号が授与された。包頭市トップの共産党市委書記の丁綉峰氏は、受賞スピーチで「内モンゴル自治区の新エネルギー発電能力は中国第1位であり、発電コストは中国国内で最も安価だ。中でも包頭市の風力発電は2540万キロワット、太陽光発電は3060万キロワットに達している。今後もシリコン産業の発展のためにグリーンで安価な信頼できる電力を提供していきたい」と語った。
包頭市郊外の草原には、風力発電のための大きな風車が林立し、太陽光発電の巨大なパネルが点在している。太陽光パネルの材料にも使われているシリコンの需要は今後も増えそうだ。その精錬に使われる電力をどうまかなうかの答えが、広大な草原を活用した自然エネルギーの活用なのだろう。
呂布が赤兎馬に乗って疾駆した内モンゴルの草原の様変わりには驚かされるが、それが地球環境にとって好ましいものであることは間違いなさそうだ。(c)東方新報/AFPBB News