【9月19日 AFP】フランスで、学校でのいじめを訴えて後に自殺した男子生徒の両親が、教育当局からいじめの通報が名誉毀損(きそん)に当たる可能性があるとする警告を含む書簡を受け取っていたことが明らかになった。両親は、この対応に「憤慨し、がくぜんとした」と吐露している。

 ニコラさん(15)は夏休みが明けた今月5日に自殺した。前年度、首都パリの西郊に位置するイブリーヌ(Yvelines)県ポワシー(Poissy)の学校でいじめを受けていたと訴え、新年度からパリ市内へ転校したばかりだった。

 ニコラさんの家族によると、いじめを通報したイブリーヌ県の教育当局から同情の念が示されるどころか、両親の主張は「受け入れ難く」、「建設的」な態度を望むとする書簡を受け取っていた。この中には、誹謗(ひぼう)中傷は5年以下の禁錮刑および4万5000ユーロ(約700万円)以下の罰金が科される犯罪行為だとする文言もあったという。

 一家はさらに、ポワシーの学校側からもいじめを否定する内容の手紙を受け取っていた。

 ニコラさんの母親のベアトリスさんはAFPとの書面でのやりとりの中で、「このような書簡を受け取り、私たちは憤慨し、がくぜんとした。ニコラの父親も私も理解できなかったし、今もまだ理解できていない」と述べた。

 イブリーヌ県当局がニコラさんの家族に書簡を送ったのは5月だった。だがその存在は先週、ニュース専門局BFMTVが報じて初めて明らかになった。

 問題の発覚で、いじめ撲滅を最優先課題として掲げるフランス政府は面目をつぶされた形となった。

 今月7日、ブリジット・マクロン(Brigitte Macron)大統領夫人と共にニコラさんの家族と面会したガブリエル・アタル(Gabriel Attal)国民教育相は、名誉毀損を警告した書簡は恥ずべきものだと批判。エリザベット・ボルヌ(Elisabeth Borne)首相も「衝撃的」だと述べた。

 ベアトリスさんは、閣僚らの言葉により息子の苦しみがやっと認められたと感じたとしながらも、今後明らかになる調査の結果次第では、法的措置も辞さない構えを示している。(c)AFP/Joseph SOTINEL