脚失ったウクライナ兵、登山で得たひとときの安らぎ
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【9月20日 AFP】ウクライナのウォロディミル・マリキンさん(31)は先週、西部カルパチア山脈(Carpathian Mountains)での登山に参加した。戦場で片脚を失ったマリキンさんが、松葉づえをついて山道を歩きながらおどけて息子のボフダンちゃん(3)を追い抜くと、ボフダンちゃんは声を上げて笑った。
マリキンさんは、従軍してウクライナ東部でロシア軍との戦闘に臨んだ。負傷した仲間を救助しようとした際に、地雷を踏んで片脚を失った。今では松葉づえを使い、歩くだけでなく走ることもできる。
マリキンさんは16日、傷痍(しょうい)軍人のリハビリと社会復帰を支援するプロジェクトの一環で、身体に障害を負った元兵士約20人と共に、標高927メートルのクリューチ(Klyuch)山の登頂を目指した。
もう一人の参加者、アンドリー・ホロパパさん(20)も昨年、東部ホルリウカ(Gorlivka)で脚を負傷し、膝下の切断手術を受けた。
休憩の際に、義足を外し草原に寝転んだホロパパさんは、登山は安らぎを得る一助になり、「自分を試し、山を征服して、小さな達成感を得る良い機会だ」と話した。
東部の戦場で右脚をなくしたワシリー・ニコラクさん(37)は他の参加者と違い、道のりの一部で、フランス製の全地形対応型車いすに乗って運んでもらう必要があったが、今回の登山は気晴らしになったと語った。
「いつも頭から離れないことも忘れられる」とニコラクさん。自分と同じ境遇の人々にとって「非常にプラスになる」体験だと述べた。
登山の企画を支援したNGOのロマン・チュバン氏は、ニコラクさんは新たな自分に「適応」する途中なのだと話した。「つらいことに、こうした状況に置かれた人が大勢いる」
ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、四肢のいずれかを失ったウクライナ人は数千人に上っている。
西部リビウ(Lviv)州当局は、今回のような傷痍軍人を対象にした登山会を今後も企画したいとしている。
山頂にたどり着いた参加者は、第1次世界大戦(World War I)で戦死した兵士の追悼碑の周囲に集まり、「英雄に栄光あれ! 国家に栄光あれ!」と声を上げた。(c)AFP