長期主義、AIめぐる議論を取り巻く「危険」なイデオロギー
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■優生学との関係
長期主義は、スウェーデンの哲学者ニック・ボストロム(Nick Bostrom)氏が1990年代から2000年代にかけて行った「存亡リスク」と「トランスヒューマニズム」の研究から生まれた。トランスヒューマニズムとは、テクノロジーによって人間は拡張できるという考え方だ。
トランスヒューマニズムはその端緒から優生学と結びついていたと、研究者のティムニット・ゲブル(Timnit Gebru)氏は指摘する。
トランスヒューマニズムという言葉を生んだのは、1950~60年代にかけて英国優生学協会(British Eugenics Society)の会長を務めた英生物学者のジュリアン・ハクスリー(Julian Huxley)だった。
ゲブル氏は昨年、「長期主義は優生学を別の言葉に言い換えただけ」とSNSで指摘した。
事実、オックスフォード大学(University of Oxford)の人類未来研究所(Future of Humanity Institute)を率いるボストロム氏は、1990年代に存亡リスクとして「劣性圧」を挙げて以降、長きにわたって優生学の支持者だと批判されてきた。この言葉には、知性が低い人の方が多くの子孫を残すといった意味がある。
同氏は今年1月、これについて謝罪した。「私が優生学を支持しているか? いいえ。一般的に理解されている意味では支持していない」と否定し、優生学は「前世紀の最も残虐ないくつかの行為」を正当化するために使われたと述べた。