■暴徒600人を20人で特定

 見当たり捜査の最も大きな成功例の一つは、2011年のロンドンで警官による黒人男性射殺事件に端を発して起きた暴動だった。

 警察は延べ20万時間分の防犯・監視カメラ映像を精査することになった。

 ネビル氏の捜査官育成企業にも関わっているグリニッジ大学(University of Greenwich)のジョシュ・デービス(Josh Davis)教授(応用心理学)は、「20人の捜査官が暴徒600人を特定した」と指摘した。

 ギャング犯罪が専門のある捜査官は、画像分析から180人も特定した。これには、実際に見たことのない人物や、画像では顔の一部しか確認できなかった人物も含まれていた。

 ロンドン西・北西部の5700平方キロ以上、人口234万人を管轄するテムズバレー警察では、性的暴行の加害者であることが判明している人物を発見するために、バーやナイトクラブの外で見当たり捜査を実施している。

 勤続26年のウォレス氏は、レディング(Reading)近郊の警察学校でこう説明した。「私服警官が挙動不審な人物がいないか見張る。犯罪行動を起こしたら、それを阻止するために制服警官を呼ぶ」

「われわれが止めた男性の5人に2人は、レイプや深刻な性的暴行で前科があった。この3年間で計520人を阻止した」

■能力を組み合わせて

 AIや顔認識技術が急速に進化する中、人間のスキルを軽視すべきではないとネビル氏は強調する。「顔認識は競争するものではない。組み合わせて使うべきだ」

「AIは(空港の電子申告ゲートのパスポート認証のような)高画質で正面を向いた画像を得意とする。人間は顔が斜めを向いていたり、サングラスやマスクで一部覆われたりした条件の悪い画像の方が得意だ」

「英国や欧州連合(EU)では法律によって、AIによる識別は逮捕前に人間による検証が求められる」

「民主国家ではコンピューターよりも人間が拘束の決定を下す方が、ほとんどの人にとって幸せだろう」とネビル氏は語った。

 同氏によると、見当たり捜査について、特にドイツとオーストラリアの警察からの需要が高まっている。

 デービス教授は、見当たり捜査官になる素質を測るための14項目から成る基本テストをオンラインで公開している。「10~12点以下なら、見当たり捜査官にはなれない。だが、もし14点に達したら、私に連絡してほしい」 (c)AFP/Caroline TAIX