【9月2日 AFP】イタリア中部で希少なマルシカヒグマの母グマが射殺されたことを受け、当局および世界自然保護基金(WWF)イタリア支部は1日、非難するコメントを発表した。

 アブルッツォ(Abruzzo)州の国立公園で「アマレーナ」と呼ばれていた雌グマは、地元では有名な存在で、同園やその周辺でよく子グマと一緒に写真に収められていた。

 公園当局によると、アマレーナを射殺したのは地元の56歳の男性。警察に対し、アマレーナが同園外の町の郊外にある自宅の敷地に侵入してきたため、恐怖心から発砲したと供述しているという。

 同園に生息しているマルシカヒグマは約60頭のみで、アマレーナはその中でも特に多産な個体だった。今夏は、2頭の子グマと一緒に歩き回っている姿を撮影されていた。

 2頭の子グマの行方は1日時点で分かっておらず、捜索活動が行われている。

 公園当局は、アマレーナは過去に近隣の畑などを荒らしたことはあるが、「人に危害を与えたことはない」とし、射殺を「正当化できる理由はない」とした。

 マルコ・マルシリオ(Marco Marsilio)州知事は、アマレーナには危険性はなかったと改めて指摘し、射殺は「理解できない」と糾弾した。

 マルシカヒグマはヒグマの亜種で、イタリア中部のアペニン(Apennine)山脈にのみ生息する。

 WWFイタリア支部は、マルシカヒグマの雌の成獣は数が少ないことから、アマレーナが殺されたのは「マルシカヒグマにとって存続の危機だ」と指摘。射殺した男性を相手取り、民事訴訟を起こす考えを示している。男性は刑事責任を問われる可能性もある。(c)AFP