【9⽉6⽇ Peopleʼs Daily】農繁期なのに、中国・遼寧省(Liaoning)の新民市(Xinmin)中古城子村の大規模穀物農家の王時忠(Wang Shizhong)さんに慌ただしさは見られない。悠然とした様子で携帯電話のアプリ「MAP智農」を開いた。画面には1800ムー(約1.2平方キロ)の土地の地図と、2時間以内の天気状況、土壌の湿り気などの情報が表示されている。

 新民市は近年、「デジタル農業」の導入を積極的に推進してきた。その結果、以前は人が耕作地に行って状況を確認せねばならなかったが、現在では衛星でデータを収集する。問題があれば状況と場所をピンポイントで示してくれる。作業量は大幅に減った。また、王さんの場合、数値情報を活用したことで昨年は1ムー当たりで25キロの増収と20元(約401円)の施肥コスト削減が実現した。

 新民市内の野菜農家の李宝吉(Li Baoji)さんは5月末、ハウス内で野菜の種まきを終えると、スマートフォンでハウス入り口の二次元コードをスキャンしてから、農作物の種類や栽培面積、種まき日、出荷予定日、予定生産量を入力した。

 この二次元コードを用いるシステムは新民市が構築した。市側が各農家の入力する情報に基づくビッグデータ分析により栽培状況を把握し、農家に市場の推移を伝達し、出荷指導も行う。

 李さんは次のハウスを訪れた。このハウスではすでに野菜が成長していた。李さんはボタンを押して遮光カーテンを展開した。同時に通気口が開き、ハウス内の温度が徐々に下がった。李さんは「この野菜は2日ほど安値が続いているので、内部の温度を調節して出荷時期を遅らせます」と説明した。

 新民市には約5万5000棟のハウスがあり、年間100万トン近い野菜を生産している。現在は全てのハウスにコードを割り振る作業を進めている。完成すれば農産物の供給方法の「質」が向上することで、農家の増収が期待できる。

 新民市大民屯鎮(Damintun)で野菜の水耕栽培を手掛ける瀋陽秋実農業科技発展(以下、「秋実」)の「植物工場」に入るには、靴に使い捨てカバーを付け、エアシャワー室を通り抜けねばならない。内部はまさに、実験室だ。水耕栽培野菜が整然と並び、天井から散乱する陽光を浴びている。

 秋実の欒氷(Luan Bing)会長は「リアルタイムでデータを収集して、それをフィードバックします。栄養液の配合比率を調整し、24時間連続で植物が必要とする養分を供給しています」と説明した。

 5000平方メートルの「植物工場」では年間40トンの葉物野菜を収獲できる。水耕栽培はさらに、伝染病や虫害の発生を回避し、農薬ゼロの栽培を実現した。野菜の成長は「二次元コード」により全過程を追跡できる。

 新民市は、秋実の成果を基礎に、多数の温室の「1画面スマート管理」する仕組みを構築する方針だ。新民市はネットワーク通信、IoT(モノのインターネット)、自動制御およびソフトウエア技術を駆使して農業生産管理の精密化を高め、従来型農業から現代化農業への転換を加速している。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News