【8月15日 東方新報】「去年、中高級タイプはいつも供給不足でした」

 そう語るのは、中国の自転車メーカー・ジャイアント(Giant)天津(Tianjin)の郭芳誠(Guo Fangcheng)社長。年間生産量が約120万台という自転車のほとんどは中高級タイプで、うち85パーセントは国内向けという。

「コロナの影響で、人びとは自転車で出かけることを好むようになりました。レジャーやフィットネスの考えも加わって需要が大幅に増えました。でも、2022年下半期はコロナの都市封鎖の影響によって一部の部品会社で生産が思うようにいかず、自転車全体の生産量が落ちました」

 当時、会社の倉庫は空になったそうだ。郭社長の話は大げさでもなく、北京の販売店の店長も「客が買いたくても商品が入ってこないという状況が普通だった」と話す。

 2022年における中国の自転車の総生産台数は5100万台を超えた。つなげれば地球を2周できる長さになるという。かつて自転車王国と呼ばれた中国は、今や自転車大国でもある。その自転車大国で供給不足が起きたことをきっかけに、自転車業界の進化の必要性を訴える声が上がっている。

 自転車が品不足になった主な原因は高級部品、中でも変速機の不足だった。世界の自転車の変速機市場は日本のシマノ(SHIMANO)と米国のスラム(SRAM)がほとんどを占め、シマノは全体の60パーセント以上のシェアを持つ。コロナの影響で東南アジアなどの一部の工場が操業を停止したため、中国への変速機の納入も滞ってしまったのだ。

 中国の自転車業界のさらなる成長にとって、自前で変速機を製作できるようになることが鍵となる。技術と特許の蓄積である既存の外国ブランドを超えるのは容易ではないが、新技術によって競争のフィールドを変えれば勝ち目はある。国産変速機の開発に関わってきた劉春生(Liu Chunsheng)氏は、「機械式の変速機では国内のメーカーがシマノの地位を揺るがすのは難しいが、電子式の変速機ならば国内で培われた電子情報産業の基礎を背景に活路を見出せる」と考えている。

 加工の課題もある。変速機の製造には腕時計と同じかそれ以上の精度が要求されるという。そのレベルの加工ができる大手の工場は、生産量が多くはない変速機の製造はやりたがらない。一方、喜んで引き受けるような小さな工場は、技術の精度が不十分の可能性もある。

 とは言え、国産の変速機が進歩しているのも確かだ。ユーザーからの信頼度はまだまだだが、一部のメーカーは売り上げと知名度を着実に上げている。変速機については、2022年6月に工業情報化部など5部門が共同で発表した「軽工業の高品質発展の推進に関する指導意見」でも、核心技術研究開発プロジェクトの中に正式に組み入れられており、さらなる進化が期待できそうだ。

 自転車の供給不足をもたらしたのは、2016年から2018年までのシェアサイクルブームの後遺症と指摘する声も聞かれる。自転車メーカーは熱に浮かされたようにこぞって薄利多売のシェアサイクルの生産に走ったため、業界の本来の発展リズムが乱れ、構造転換とアップグレードのペースが遅れた。自社製品の開発や市場分析の長期的な戦略を見失うべきではないというのが教訓だ。

 業界の将来はスマート化や電動化にもかかっているだろう。「中国の自転車・電動自転車のスマート化発展白書(2022年版)」でも、自転車メーカーにとって持続的なスマート化のアップグレードは必然的と指摘されている。(c)東方新報/AFPBB News