【8月11日 AFP】エジプトの西方砂漠(Western Desert)で、始新世の4100万年前に生息していた古代種のクジラの化石が発掘された。クジラの祖先が陸から海への移行を完了した頃のものだという。

 古生物学者のチームは古代エジプトの王(ファラオ)、ツタンカーメン(Tutankhamun)と、化石が発見されたファイユーム・オアシス(Fayoum Oasis)にあるワディラヤン自然保護区(Wadi El-Rayan Protected Area)にちなみ、発見された新種のクジラの学名を「Tutcetus rayanensis」と命名した。

 この化石は水中のみで生活するようになった最古のクジラ「バシロサウルス」の仲間でこれまでに発見された最小の種で、体長2.5メートル、体重約190キロと推定される。

 チームを率いたカイロ・アメリカン大学(American University in Cairo)のヒシャーム・サラム(Hesham Sallam)氏は「完全な水中生活への移行の第一段階の一つを記録する驚くべき発見」だと語った。

 サラム氏によるとバシロサウルス科は流線型の体、強力な尾、ひれや尾びれといった魚に似た特徴を発達させつつ、「脚」に見える後肢を残していた。

 首都カイロの南西約150キロに位置するファユーム・オアシスには、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産に登録された「クジラの谷」と呼ばれるワディ・ヒタン(Wadi al-Hitan)があり、バシロサウルス科の化石が多数出土している。

 この一帯は今は西方砂漠のオアシスとなっているが、5600万~3400万年前の始新世には熱帯の海の底だった。(c)AFP