【8⽉10⽇ Peopleʼs Daily】中国・四川省(Sichuan)広漢市(Guanghan)の三星堆博物館三星堆博物館(Sanxingdui Museum)の新館が7月27日に一般公開された。展示されている文化財のうち、600点近くが初の一般公開だ。

 三星堆遺跡は中国南西部で最も大規模で、文明の継続時期が最も長く、出土文化財が最も豊富な紀元前の遺跡だ。三星堆遺跡の発見は人類の最も偉大な考古学的発見の一つともされている。

 文化財は地下では比較的安定した状態だが、出土後には保護が遅れれば、色の変化や物質組成の変化などで、壊滅的な損傷が及ぶ。2021年に三星堆遺跡の発掘が再開された際には、密閉型の発掘モジュールや防護服を着た発掘参加者が人びとの注目を集めた。発掘現場を密閉したのは温度と湿度を厳格に制御するためで、さらに外部からの塵や細菌などの影響を遮断した。発掘モジュールのそばには、さまざまな先進的な設備が整った緊急文化財保護実験室と臨時倉庫も設置された。

 発掘調査員は文化財と密接に接触している土壌や付着物も採取して、化学的性質を分析する。このことには、文化財のその後の保護にとって、極めて重要な情報を得る目的もある。大型青銅器については、些細な損傷までも防止するために、3D印刷技術によりぴったりと収まるシリコン製の保護ケースを作った。

 文化財は破壊されて別々の場所で出土することもある。三星堆の新たな発掘では、出土品の全方位スキャンを行い、3次元モデルを構築した。さらに人工知能(AI)技術を利用して互いのマッチング度を計算するなどで、多くのつなぎ合わせの組み合わせの可能性を検証した。研究者は実物に触れる必要がなく、さまざまな可能性を検証しつつデジタル空間で復元作業を行った。

 かつては科学技術が未発達なために、結論を得られなかったこともある。三星堆から1980年代に青銅器が出土した際に、研究者は付着している「灰」に注目した。絹の残存物ではないかと推測したからだ。しかし断定はできなかった。

 近年になって謎が解けた。中国シルク博物館などが開発したシルクタンパク質検査技術を利用して、2021年の三星堆遺跡祭祀坑の発掘では、大量のシルク残留物を発見したのだ。研究者はさらに、30年以上前に出土した青銅器の一部を改めて調査して、絹が存在したことを確認した。当時の三星堆文明が、絹織物の生産技術を有していたことを証明する極めて重要な成果だった。

 出土した文化財の経年劣化は不可逆だ。デジタル手段を利用して文化財の情報を完全に記録することで、文化財に「新たな命」を吹き込むことができる。さらに、デジタル化によって世界の研究者と来場者はいつでもどこでも文化財情報にアクセスできるようになった。デジタル技術は、世界文明の相互参照と社会における科学普及教育の推進に極めて大きな力を発揮している。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News