【7⽉31⽇ Peopleʼs Daily】中国科学院国家天文台の研究者などで構成される中国パルサータイミングアレイ研究チームはこのほど、「中国天眼」とも呼ばれる口径500メートル球面電波望遠鏡(FAST)を利用してナノヘルツ重力波の存在に関する重要な証拠を検出した。

 アインシュタインの一般相対性理論によれば、質量によって生じる重力とは空間のゆがみであり、質量を持つ物体が加速運動をすれば、空間のゆがみが重力波となって伝わる。重力波の信号は極めて微弱だが、宇宙の非発光物質を探査する直接の手段だ。研究者は重力波を長年にわたり追い求めてきた。

 国家天文台の胥恒(Xu Heng)助理研究員は、「ナノヘルツ重力波は周期が数年に及び、その波長は数光年に達するため、その探査は非常に挑戦的です」と説明した。

 加速運動をする天体の質量が大きいほど、発生する重力波の周波数は低くなる。ナノヘルツ重力波は超大質量ブラックホール、銀河合体の歴史、宇宙の大域構造の形成などの問題を理解する上で重大な意義を持つ。世界の研究者が、ナノヘルツ重力波の観測に強い関心を抱いている。

 北米、欧州、オーストラリアのチームは20年間にわたり、パルサーと呼ばれる天体が放射するパルス状電磁波の周期の微小なずれを測定する方法で、ナノヘルツ重力波を追い求めてきた。

 胥助理研究員によると「大型電波望遠鏡を利用して自転が極めて規則的なミリ秒パルサーの長期的な観測を行うことが、現在知られているナノヘルツ重力波の唯一の探査手段です」とのことだ。

 中国の科学研究チームはFASTを利用して57のミリ秒パルサーの長期的かつ系統的な観測を行い、これらのミリ秒パルサーを超巨大な重力波検出器として利用することでナノヘルツ重力波を探した。研究者はFASTが収集した3年5か月分のデータを分析してナノヘルツ重力波の発生を示す証拠を発見した。精度は極めて高く、誤認率は50万分の1以下という。

 中国のチームの研究時間は米・欧・豪のチームより短かったが、FASTが持つ「感度が高く、観測可能なパルサーの数が多く、測定精度がより高い」という長所を十分に生かし、さらに独自のデータ分析ソフトの開発などで、他の研究チームに匹敵する革新的な成果を得た。

 北京大学(Peking University)の何子山(He Zishan)客員教授は、「ナノヘルツ重力波の発生は、超大質量ブラックホールの合体現象の予言だ」と説明して、中国の研究チームがFASTを利用して証拠を得たことを「科学における重大な飛躍であり、長期にわたる大きな意義を持つ。銀河の進化や超大質量ブラックホール研究に強い影響を与えるだけでなく、重力波天体物理学の新たな窓を開いた」と評価した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News