【7⽉30⽇ Peopleʼs Daily】中国・河北省(Hebei)の武強県(Wuqiang)周窩村を歩けば、建物の壁に描かれたピアノやギターの図柄が目に入る。タンブリンの形のごみ箱もある。建設された世界楽器博物館は、貴重な楽器を1500点も所蔵している。地域全体が音楽の雰囲気にあふれている。

 中国では1980年代、西洋楽器への需要が急増した。武強県出身の陳学孔(Chen Xuekong)さんは別の土地で仕事をしていたが、楽器製作を学んだことがあった。そこで帰郷して、他の住人と共に県初の楽器工場を設立した。

 工場は大都市の楽器工場から技術者を招いて学び、高級な楽器も生産するようになった。現在の主力製品は木管楽器、金管楽器、バイオリン類、ギター類で、西洋管楽器の年間生産量は100万点で、生産高は4億2600万元(約84億円)だ。

 村の家は、中国北部の民家の風貌を維持しつつ「芸術化」された。観光による地域おこしを狙ったからだ。周窩村は2012年から周窩音楽小鎮と名乗るようになった。特色ある民宿やカフェ、楽器体験館、周窩音楽体験センター、世界楽器博物館などが作られた。周窩音楽小鎮で開催される中国ギター文化祭や野外コンサートには、中国内外の有名な音楽家や音楽団体も出演するようになった。

 音楽会館の楽器体験店をのぞくと、店員の韓強(Han Qiang)さんがギターを観光客に紹介したり、即興で曲を弾いたりして、喝采を浴びていた。

 韓さんはかつて、7ムー(約0.0047平方キロ)の畑を耕し、時折近くの工事現場でレンガを運ぶアルバイトをしていた。周窩音楽小鎮の建設時に壁を塗る仕事をして、ギターに興味を持つようになったという。韓さんは楽器店の販売員兼演奏員になった。「良い時にはギターやバイオリンを1日に3、4本売って、1年で7万元(約137万円)を稼いでいます」とのことだ。

 周窩村の住人1人当たりの年収は、音楽小鎮建設前には3000元(約5万8914円)余りだったが、現在では2万5000元(約49万円)になった。

 周窩村だけでなく武強県全体で楽器製造業が発展した。県内の楽器製作会社は63社で、クラスター化、大規模化を実現し、従業員数は1万人余りに達した。2022年の全県の楽器産業の年間売上高は19億1200万元(約375億円)だった。

 行政は、専門の音楽教師を招いての楽器演奏の公益授業を何度も手配した。関連企業は楽器を提供した。こうして、音楽イベントに触れ、演奏を学ぶことで、住人の心に音楽の種が根付いていった。今では夏の夜になれば、村民らが結成した多くのバンドが広場で演奏し、集まった人から喝采を浴びるようになった。

 武強県は小中学校と幼稚園での音楽教育にも力を入れている。県内の学校に配備した楽器類は計1200点余りで、専門あるいは兼任の音楽教師140人余りを育成した。楽器演奏に参加した生徒は1万人以上に達した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News