【7月13日 AFP】古代エジプト王(ファラオ)ラムセス2世(Ramses II)の王笏(おうしゃく)の位置を動かしたり、首飾りや頭飾りを修正したりと、往時の画家たちは、これまで考えられていた以上に創造性を発揮していたことが、12日に公表された研究結果で明らかになった。

 研究は仏国立科学研究センター(CNRS)のフィリップ・ウォルター(Philippe Walter)氏ら国際チームが行ったもので、米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に論文が掲載された。

 研究チームはルクソール(Luxor)の墳墓群「王家の谷(Valley of the Kings)」の墓を携帯型の画像・化学分析装置を使い精査した。

 専門家はこれまで、こうした墳墓の装飾美術は極めて様式化されており、一定の決まりに基づいて、あらかじめ決められたパターンが使いまわされてきたと考えていた。

 チームは今回、小型ロボットを壁画前に設置し、エックス線や紫外線を照射したり、赤外線画像を取得したりした。

 紀元前1200年ごろの神官の墓には、ネックレスや頭衣を着け、王笏を持つラムセス2世を横から見た肖像が描かれている。

 この絵を分析したところ、もともとは違う構図で、修正された跡があることが分かった。

 ウォルター氏は「極めて型通りの王の肖像とみられる絵にこうした修正があるとは予想していなかった」と話した。

 同様の修正は、貴族男性の墓でも見つかった。

 壁にその男性が死者の神オシリス(Osiris)に腕を伸ばす姿が描かれているが、片方の腕の位置が変更されていた。肌の色に使われた顔料にも変更があった。

 こうした修正がいつ、あるいはどのような目的で行われたのかは不明だが、研究チームは画家たちの「創作の自由」を示すものだとしている。(c)AFP/Juliette COLLEN