【7月3日 AFP】フランスで先週、交通違反の取り締まり中に17歳の少年が射殺された事件で、発砲した警官を支援する募金が3日までに98万6000ユーロ(約1億5600万円)超に上った。事件に対する抗議デモを発端に、仏全土で暴動が起きている。

 極右メディアのコメンテーター、ジャン・メシア(Jean Messiha)氏が開設したオンライン募金に、これまでに4万人以上が寄付した。メシア氏は、反イスラムを公言する極右評論家で昨年の大統領選に出馬したエリック・ゼムール(Eric Zemmour)氏と親しい。

 警官のために集まった額は、死亡したアルジェリア系のナエル・Mさんの遺族のために集まった募金18万9000ユーロ(約3000万円)を大きく上回っている。

 ナエルさんの祖母は2日、ニュース専門放送BFMのインタビューで、孫を射殺した警官を支援する動きがあることについて「心を痛めている」と述べた。また「この男も皆と同じように償わなければならない。私は司法制度を信頼している。正義を信じている」と語った。

 中道与党や左派の政治家らは、警官を支援する募金を非難している。

 左派のマチルド・パノ(Mathilde Panot)議員は、2019年のマクロン政権に対する抗議デモ「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト、gilets jaunes)」で警官数人を殴った元ボクサーを支援する募金が当局によって即時閉鎖されたことと比較し、「23年のフランスでは、北アフリカ系の若者を殺せば大金が手に入る」と批判した。

 この事件で発砲した警察官は拘束され、過失致死罪に問われている。仏メディアはこの警官の氏名を「フロリアン・M」とだけ伝えている。

 ナエルさんは27日朝、パリ郊外ナンテール(Nanterre)でレンタカーを運転していた際、複数の違反を犯したとして警察に車両の停止を求められた。発砲の場面を捉えた動画には、ナエルさんが無免許で運転していたメルセデス(Mercedes)を、警官が同僚と共に制止する姿が映っている。車両が発進すると、銃を構えていた警官が至近距離から発砲したのが分かる。

 車に同乗していた10代の若者はメディアに、警察は発砲前にも銃でナエルさんを殴ったと語っている。(c)AFP