【7⽉3⽇ Peopleʼs Daily】中国・広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)南寧市(Nanning)の市街地から車を約100キロ走らせると、中国初の「ロッククライミングの町」を擁する馬山県(Mashan)にたどり着く。同県はかつては国家級の貧困県。土地は痩せ、岩の多い山が連なるこの地に、ロッククライミングは発展の機会をもたらした。

 現地にある山では数人が岩壁をまさに上っていくところだった。「ここは広く知られるようになりました」と紹介してくれたのは、遠く陝西省(Shaanxi)からやって来た愛好者だ。「ここ」とは「ロッククライミングの町」の中心部、同県の古零鎮羊山村三甲屯を指す。

 三甲屯では2017年5月に国内外の選手が集う大会が開かれ、同年8月に国家体育総局登山運動管理センター、中国登山協会と地元政府の後押しの下、県に「ロッククライミングの町」が誕生した。県文化広電体育・旅遊局の黄旭進(Huang Xujin)局長は、中国登山協会のメンバーが三甲屯の岩壁を高く評価したことを振り返る。一方、古零鎮の黄麟恵(HuangLinhui)鎮長は山が「人気者」になるという状況に感慨を禁じ得ない。黄鎮長によると、これまで住民の念頭にあったのは「どうやって山の石を売るか」だった。

 馬山県は素晴らしい自然の岩壁に発展の方向性を見いだし、三甲屯で開かれた一連の大会は県の名を遠くに広めた。これと同時に県は学校現場でのロッククライミングの普及、人材育成にも力を入れている。

 2018年に国家少年ロッククライミング集団訓練隊(馬山組)が発足し、古零鎮初級中学と馬山中学にチームが設けられた。全国の実力選手らに学校で指導してもらう取り組みもある。より多くの子どもたちにロッククライミングを知ってもらおうと、県教育局は23の学校にロッククライミングの授業を導入した。2023年5月までに地元選手が国内外で獲得したメダルは金100個、銀90個、銅80個。訓練隊の一員の韋俊歓(Wei Junhuan)さんは、「各地の選手と互いに励み合えば自分の短所を補い、広い世界を見ることにもつながります」と語る。

 ロッククライミング人気を収益に変えるために馬山県は運営、管理を担う企業を導入した。中心エリアにはすでに22の岩壁と553本のクライミングルートが整備されている。キャンプ場などの関連施設も整い、ロッククライミングができない人もここでアウトドアスポーツの面白さを体感することが可能だ。

 スポーツ産業が発展し始め、地元住民は豊かになった。羊山村の梁芳玲(Liang Fangling)さんは、「休日は忙しくて手が回りません。収入も増えました」と笑顔を見せた。梁さんは以前、村を離れて働いていたが、「ロッククライミングの町」ができた後に帰郷した。研修を経て、今は関連施設の保安員を務めている。そしてスポーツと観光が深く溶け合うのに伴い、経営の業態もますます増えた。2022年、馬山県が受け入れた観光客は400万人余り、観光収入は26億8900万元(約535億7375万円)。消費は力強く引っ張られ、地元の振興を後押しした。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News