「皮膚に穴」も…米オピオイド問題、動物用鎮静剤併用で深刻化
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【7月15日 AFP】麻薬性鎮痛薬「オピオイド」依存症のマーチンさん(45)は、合成オピオイド「フェンタニル」が、米ニューヨークでまん延するヘロインに取って代わるのを身をもって体験した。そして今は、フェンタニルと合わせて使われる動物用鎮静剤「トランク(Tranq)」を避けるよう注意を払っている。
トランクには、皮膚を損傷させる副作用があり、使用への懸念が全国規模で広がっている。
ブロンクス(Bronx)地区の薬物依存患者支援センターを訪れていたマーチンさんの腕や足には大きな傷がある。知らないうちに「ゾンビドラッグ」とも呼ばれる動物用鎮静剤「キシラジン(xylazine)」を使ってしまった可能性があるというのだ。
マーチンさんは「体や皮膚に穴をあける」「ワニみたいに肉を食べてしまう」と説明した。
動物用の薬として米食品医薬品局(FDA)に認可されているキシラジンだが、最近では麻薬の効果を増強する目的でフェンタニルと一緒に取り扱われるケースが増えている。
近年、薬物過剰摂取により死亡した人からトランクが検出される事例が増えている。ホワイトハウス(White House)は今年4月、トランクを「新たな脅威」に指定した。
キシラジンはインターネットで簡単に購入でき、ほとんどの場合、ヘロインの50倍強力なフェンタニルと一緒に使われる。
現在、トランク乱用の中心地はフィラデルフィア(Philadelphia)だが、ニューヨークでも使用が拡大している。ニューヨーク市当局によると、2021年に市内で発生した薬物過剰摂取による死者419人のうち、19%からキシラジンが検出された。
ニューヨーク大学(New York University)のコートニー・マクナイト(Courtney McKnight)臨床助教(疫学)は「フェンタニルは効果の持続時間が短いオピオイドで、離脱症状が出ないよう頻繁に摂取しなければならない」と説明する。
「キシラジンはフェンタニルの効き目を長引かせることができる。その理由から添加されているとみられる」