【6月23日 AFP】豪華客船タイタニック号(RMS Titanic)の残骸見学ツアーに向かい、大西洋で消息を絶った深海潜水艇の乗客乗員5人はおそらく一瞬にして亡くなった──米沿岸警備隊は22日、潜水艇の破片を発見したと発表。潜水艇は水圧で押しつぶされたとの見解を示した。

 同艇にはツアーを催行する米企業オーシャンゲート・エクスペディションズ(OceanGate Expeditions)の最高経営責任者(CEO)、タイタニック号探査の専門家、英航空業界の重鎮、パキスタンの実業家親子が乗っていた。

■ストックトン・ラッシュ氏

 米国人のストックトン・ラッシュ(Stockton Rush)氏は2009年、米ワシントン州を拠点とする潜水観光を催行するオーシャンゲート・エクスペディションズを創業。タイタニック号の残骸見学ツアーは長年、支援船に関する許可がなかなか得られず、21年に開始したところだった。

 同社ウェブサイトによると、ラッシュ氏は1981年に世界最年少となる19歳でジェット機パイロットとしてキャリアをスタート。米大手航空機メーカー、マクドネル・ダグラス(McDonnell Douglas)でF15戦闘機のフライトテストエンジニアを務めた後、ここ20年は海洋関連の技術ベンチャー事業に乗り出していた。

■ポールアンリ・ナルジョレ氏

 ポールアンリ・ナルジョレ(Paul-Henry Nargeolet)氏(77)は、フランス海軍出身の探検家で、「ミスター・タイタニック」と呼ばれるタイタニック号探査の専門家。米コネティカット州を拠点に30回以上の潜水調査を行い、タイタニック号沈没現場から約5500点の品々を引き揚げる作業を監督した。

 1912年のタイタニック号沈没事故については、氷山との衝突後にできた100メートルの裂け目ではなく、五つの小さな穴が原因だと主張した。世界中の海で潜水し、深海探査のリスクについても率直に語っていた。

■ハミッシュ・ハーディング氏

 ハミッシュ・ハーディング(Hamish Harding)氏(58)は、英国の航空王で冒険家。三つのギネス世界記録(Guinness World Records)を持つ。

 インドでの物流業を経て2004年、英ロンドンとアラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする航空機販売代理店「アクション・アビエーション(Action Aviation)」を設立。

 1年前には、米富豪ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏が設立した宇宙開発企業ブルー・オリジン(Blue Origin)による宇宙旅行にも参加した。

■シャーザダ・ダウード氏と息子のスールマンさん

 パキスタンの実業家のシャーザダ・ダウード氏(48)は、首都カラチを本拠にエネルギー分野から農業、石油化学、通信まで手広く展開する複合企業エングロ(Engro)の副会長。

 同乗していた息子のスールマン・ダウード(Suleman Dawood)さん(19)は大学生で、2人とも英国籍を保持していた。

 一族の持ち株グループ、ダウード・ヘラクレス(Dawood Hercules)の発表によると、英国と米国で教育を受けたシャーザダ氏は「特に野生動物を主とする写真撮影や自然探検」に強い関心を持っていた。(c)AFP