【6月22日 東方新報】中国北西部の甘粛省(Gansu)隴南市(Longnan)武都区(Wudu)の白龍江(Bailong River)のほとりで最近、野生のトキが見つかった。トキは世界絶滅危惧種で中国でも国家一級重点保護野生動物に指定されている。武都区で野生のトキが確認されたのは約70年ぶり。中国のトキは絶滅寸前から復活を遂げており、中国の環境が徐々に改善されている象徴となっている。

 トキはかつて東アジアとシベリアに幅広く生息していたが、20世紀に朝鮮半島や日本などで絶滅。中国でも姿を消したとみられていたが、全国各地でトキを捜していた中国科学院動物研究所の調査隊が1981年、陝西省(Shaanxi)漢中市(Hanzhong)洋県(Yang)で野生のトキ7羽を発見した。調査隊メンバーで鳥類専門家の劉蔭増(Liu Yinzeng)さんは中国メディアに「中国でも20年余り姿を見せていない鳥を捜すのは、海に落とした針を捜すようなものだった」と話している。

 洋県ではトキ保護事務所が設置され、スタッフがトキを観察し、えさを与え、けがをした時は保護をして応急手当てをした。こうして保護活動のノウハウを積み上げ、トキの繁殖は進んだ。現在は洋県だけでなく、陝西省の他の地域や河南省(Henan)、浙江省(Zhejiang)など各地でトキが生息している。

 中国では急激な経済成長に伴い、各地で大気汚染や水質汚濁が深刻となり、鳥類の食料源や生息地にも大きな影響を与えた。こうした状況を改善するため中国政府は希少鳥類とその生息地を保護する法律や規制を導入。自然保護区の設置や密猟の取り締まりにも力を入れてきている。

 その結果、1981年に7羽が見つかったトキは現在7000羽を超え、30年前に3000羽だったコウノトリは1万羽近く、5000羽だったオグロヅルは1万5000羽以上に増えた。その中でも、美しい外見や希少性から「東洋の宝石」「鳥類のパンダ」と言われるトキの増加は、野生動物の保護政策が功を奏していることを表している。

 トキと言えば、1999年に中国から友友(You You、ヨウヨウ)と洋洋(Yang Yang、ヤンヤン)のペアが日中友好の証しとして日本に提供され、繁殖に成功している。その後も中国からトキが提供され、いま日本で増えているのは中国由来のトキたちだ。

 日本の研究チームによると、日本産と中国産のトキの遺伝子の違いは0.065%。日本人一人一人の遺伝子が少しずつ違うのと同じ「個体差レベル」という。世界から姿を消す寸前だったトキが、関係者の長年の努力により、東アジア各地の空を羽ばたくようになっている。(c)東方新報/AFPBB News