【6月17日 AFP】英国で最も有名なホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)生存者の一人で、男子重量挙げの英国代表として五輪に2度出場したベン・ヘルフゴット(Ben Helfgott)氏(93)が16日、死去した。
 
 英国のリシ・スナク(Rishi Sunak)首相は、ツイッター(Twitter)で「ベンは人類最悪の時期を生き延びた。彼の遺産は、その暗闇を乗り越えた究極の勝利だ」と追悼した。

 ヘルフゴット氏は1929年にポーランドで誕生。第2次世界大戦(World War II)初期にナチス・ドイツ(Nazi)が同国に侵攻した際、ユダヤ人である同氏の一家はユダヤ人隔離居住区のゲットーに強制収容された。

 2か所の強制収容所と1か所の労働収容所における過酷な状況を生き延びたが、親族の大半をジェノサイド(集団殺害)で失い、戦後に15歳で単身渡英した。

 重量挙げとの出会いは、1948年にロンドン北部ハムステッドヒース(Hampstead Heath)で重りを挙げている若い男性グループの前を通り過ぎたとき、試してみたいと声をかけたことだった。

 その後、1956年に重量挙げの英代表チームの主将としてメルボルン五輪に臨み、1960年にはローマ五輪にも出場。英カーディフで開催された1958年のコモンウェルスゲームズ(Commonwealth Games、英連邦競技大会)では、銅メダルに輝いた。

 ヘルフゴット氏は2012年にサッカーイングランド代表がアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所を訪れる前に講義を行うなど、生涯を通じてホロコーストの認知維持に尽力した。2018年には、ホロコーストの追憶と教育への貢献が認められ、ナイトの称号を授与された。(c)AFP