【6月10日 AFP】スウェーデンの首都ストックホルム国立科学技術博物館で現在、ミケランジェロ(Michelangelo)や高村光太郎(Kotaro Takamura)ら、彫刻界の巨匠5人の作品を人工知能(AI)に学習させてつくり上げられた彫刻「不可能な像」が展示されている。

 創造性とアートについての従来の概念に揺さぶりをかけるステンレス鋼製の像は、高さ1.5メートル、重さ500キロ。下半身を金属に覆われた中性的な人物が、片手でブロンズ製の地球をつかんでいる。

 コンセプトは、それぞれの時代に足跡を残した5人の著名な彫刻家の作風をミックスさせた作品をつくり出すことにあった。

 選ばれたのは、イタリアのミケランジェロ(1475-1564)、フランスのオーギュスト・ロダン(Auguste Rodin、1840-1917)、ドイツのケーテ・コルビッツ(Kathe Kollwitz、1867-1945)、日本の高村光太郎(1883-1956)、米国のオーガスタ・サベージ(Augusta Savage、1892-1962)。AIに5人の彫刻作品の画像を大量に学習させたという。

 三つのAIソフトを駆使して作品をつくり上げたスウェーデンの機械工学グループ「サンドビク(Sandvik)」の広報は、「現実には共同作業があり得なかった5人の巨匠による像」だと説明している。

 だが果たしてこれは芸術なのか、それとも技術の成果なのだろうか。

 同館で企画を担当しているジュリア・オルデリウス氏はAFPに、「これは人間がつくったものとは思えない」と指摘した上で、「芸術とは何かを定義することはできない。これは芸術だ、これは違うと考えるのは、人によって異なる。判断するのは作品を鑑賞する人それぞれだ」と語った。

 アート界におけるAIの役割について議論が行われる中、AIをめぐる未来については悲観していないと話す。

「AIが創造性やコンセプト、アートやデザインについて行うことを不安に思う必要はない」「テクノロジーがコンセプトやアートを生み出す方法の一部になる新しい未来に適応していく必要があると思う」と話した。(c)AFP