■「料理への情熱」

 エル・ブジの歴史を残すために設立された財団は、この博物館に1100万ユーロ(約16億5000万円)を投じた。

 アドリア氏がエル・ブジへやって来たのは1983年。友人の勧めで1か月だけ、見習いとして働いた。だが翌年には部門シェフとして勧誘され、87年には料理長となった。

 90年には、ビジネスパートナーで総支配人となる故ジュリ・ソレール(Juli Soler)氏と共にエル・ブジを買収した。

「エル・ブジで私に起きた最も重要なことは、料理への情熱を初めて発見したことだった」とアドリア氏は振り返る。「スタッフみんなで食事をする際にも、サッカーや週末の話ではなく、料理について話し合っていた」

■「閉店すべきだと確信」

 エル・ブジが店を開けていたのは通常、1年のうち半年のみ。アドリア氏とスタッフが新しい料理を考案する時間を確保するためだった。

 2011年の閉店前には、数十の小皿から成るコース料理を飲み物1杯込みで325ユーロ(約5万円)前後で提供していた。1日50席の予約を何とか取り付けたゲストの食事を、総勢70人のスタッフが準備した。

 アドリア氏は、革新的な料理が万人受けするものではなかったことを認めている。「いわば新しいもの、新しいショックを次々と繰り出しているうちに、自分を見詰め直すようになるのは当然だ」

 閉店前の最後の数年間は予約の申込が殺到し、主に抽選で席を割り振っていた。やがてアドリア氏は「怪物のようになってしまった」と述べて、閉店を決意した。

「閉店するのが正しいことだと確信していた。われわれは最高のレベルで満足のいく体験ができたと感じた。それを達成してなお、『なぜ続ける必要があるのか?』とわれわれは自問した。エル・ブジの使命は続けることではなく、限界まで到達することだった」 (c)AFP/Rosa SULLEIRO