【6月8日 AFP】米ニューヨーク大学(New York University)グロスマン医学部(Grossman School of Medicine)のチームが、新たに開発した人工知能(AI)ツールを使って医師のメモを読み取り、死亡リスクや再入院など患者の予後について正確に予測できることを実証した。研究結果が7日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 チームが開発したのは、大規模言語モデルの「NYUTron」。ニューヨーク市内の同大系列の病院ですでに使用されている。

 AIの学習は、2011年1月~20年5月に系列病院で治療を受けた患者38万7000人分の記録を用いて行った。患者の経過記録から放射線検査報告書、退院指示書まで医師が書いたあらゆる記録に基づき、41億語から成るデータベースが作成された。

■人間の代替ではない

 これまでNYUTronは、入院中に死亡した患者の95%、30日以内に再入院した患者の80%について、現実と同じ結果を予測できた。

 また、患者の入院期間に関しては79%、保険適用を拒否されたケースの87%、原疾患に加え続発性疾患を併発した症例の89%を正確に予想した。

 NYUTronの予測能力は多くの医師や、現在使用されているAI以外のコンピューターモデルをしのいでいた。

 ただし、「ある著名なベテラン医師はAIを上回る超人的なパフォーマンスを発揮した」と、同大の神経外科医でコンピューター科学者でもある論文の主著者、エリック・オールマン(Eric Oermann)氏はAFPに語った。この点はチームにとって意外だったという。

 同氏は、AIは決して治療に当たる医師に置き換わるものではなく、「より多くの情報に基づいた決定を医師が行うための診療現場におけるシームレスな情報提供」を支援するものだと述べた。(c)AFP/Issam AHMED