【6月4日 AFP】ウクライナの首都キーウで、迷彩柄のエプロンを着けたボランティアが、ロシアと戦う兵士のために即席「ボルシチ」セットを用意している。伝統的なスープボルシチは、ウクライナ兵にとって象徴的な意味を持つ。

 ウクライナでは全国各地で、部隊への食料供給を政府、個人、ボランティアが担っている。

「前線で重要なのは弾薬と食料」だと、ボランティア団体「キャピタル・キッチン・ユニット(Capital Kitchen Unit)」のコーディネーターを務めるスビトラーナ・コジナさんは話す。部隊に送るため、ボルシチの材料を乾燥させた即席セットを月に4000~5000個作っている。

「これなら、かばんや上着のポケットにも入れられるし、防弾チョッキの後ろに取り付けられる」と言う。

 ボルシチは、ウクライナにとって文化的に特別な意味を持つ。ウクライナとロシアは、どちらの国の伝統料理かをめぐって「ボルシチ戦争」を繰り広げてきた。

 だが、ロシアによる侵攻後にウクライナ政府の要請を受け、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)は2022年、ウクライナのボルシチ料理の文化を消滅の危機にひんする無形文化遺産に指定した。

 ボランティアの一人は作業をしながら、自分が調理しているのは「ユネスコに無形遺産として認められたウクライナのボルシチ」だと誇らしげに語った。

「ニンジン、ビーツ、タマネギ、青野菜、乾燥させたジャガイモ、スパイス。そしてトマトペースト。すぐにできるセットで、鍋に入れて、好きなだけ肉を入れれば完成する」と話した。

 キーウ市内では別のボランティア団体が、ナッツやドライフルーツを使ったスティック状の栄養補助食品を作っていた。「フィールドキッチンB-50(Field Kitchen B-50)」という名称は、付近に展開している部隊にちなんでいる。

「食べ物は、いつだって大切だけど、戦時中は特に大切だ」と、ボランティアの一人、アリーナ・イェシュチェンコさんは語った。

 最前線で市民を守るウクライナ兵のために「できることは何でもする」と述べた。

 映像は5月撮影。(c)AFP/Victoria LUKOVENKO