病院で受け取った処方箋(c)news1
病院で受け取った処方箋(c)news1

【06月03日 KOREA WAVE】私は、私のままで愛されることはない存在なのだろうか。私はもう社会で認められない存在なのか……。希望が消えた。「死ななければならない」。こう考えたりもした。

歌手のイ・ヘインさん(活動名バーバラ・35)の言葉だ。芸能界デビューを理由にダイエットを強要され、10年以上、摂食障害を患い、今も後遺症に苦しんでいる

摂食障害とは、異常な体重調節や極端なダイエットによって食べる行為に困難をきたす疾患だ。

ただ、歌いたかった少女が、なぜ摂食障害に追い込まれたのだろうか。そして、なぜそんなに長い間、体と心に傷を負ったのだろうか。

摂食障害は「個人の意志」の問題とみなされがちで、社会的な認識はずっと変わらない。「食べ物一つも調節できないのか」という観点だ。

しかし、摂食障害は単なるダイエットでは説明できない疾患だ。生物学的要因はもちろん、心理的な問題や家庭環境、社会的強迫など、多様な要因が影響を及ぼす――これが専門家の見解だ。

◇痩せているのは「正しいこと」

韓国ほど、ダイエットを信奉する国はない。メディアではスリムな体を作るための食事療法と運動方法が繰り返し再生される。

問題は、痩せているのは「正しいこと」、あるいは「きれいなこと」だという社会的な固定観念が摂食障害を煽っている点だ。これはSNSで簡単に見られる「食べて吐く」「噛んで吐き出す」などのハッシュタグを見ても分かる。

さらに10代と20代の間では「骨が細い」(骨が見えるほどの痩せた体つき)という単語が流行している。賛成という意味の「プロ(pro)」と、拒食症という単語「アナレクシア(Anorexia)」の合成語である「プロアナ」になろうとする人も相当数いる。

誤った認識と異常な体つきを好む現象は、麻薬類医薬品の誤用・乱用という副作用まで生んでいる。

news1の取材チームは、医薬品誤用・乱用の実態を調べるため、いわゆる「ダイエット薬3大聖地」の一つと呼ばれるソウル市九老区(クログ)のある病院を訪れた。

病院で処方された薬(c)news1
病院で処方された薬(c)news1

◇診察は5分以下

取材チームが病院を訪れたのは午前8時。

開院前から30人余りが番号札を手に待機していた。先頭の女性は、前日午後10時半から待っているという。取材チームのメンバーも診察を申し込み、午後3時30分の予約を取ることができた。

長い待ち時間とは異なり、診察はあっという間に終わった。5分もかからなかった。

痩せる目的や関連疾患を尋ねるような相談はなかった。

一方で、処方された薬は溢れていた。一度に摂取するように処方された薬は、9錠に達した。

処方された薬は、ジエチルプロピオン系の医療用麻薬類だった。抗うつ剤など中枢神経系に影響を与え、乱用すれば憂うつ感、自殺衝動など精神科的副作用を起こしかねない薬だ。

医療用麻薬類は、お金さえ出せば簡単に購入でき、1カ月分も処方してもらえる。

このような医療行為が違法ではないかと疑われ、実際、この病院は後日、麻薬類管理法違反の疑いで警察の捜査を受けることになった。

◇向精神性食欲抑制剤

薬物はオンラインで違法に売買されることが多い。

ある青少年は「痩せる薬」と呼ばれる麻薬類に分類される食欲抑制剤「Dietamin」を、SNSで1錠7000~8000ウォン(約744~850円)で購入したという。「Dietamin」は、ジエチルプロピオンよりはるかに危険な薬で、処方が必須とされる医薬品だ。

盆唐ナウリ家庭医学科のイ・ジンボク院長は次のように指摘する。

「向精神性食欲抑制剤とは、中枢神経に作用して食欲を抑制する薬物だ。乱用、依存性、禁断症状などが生じる可能性があり、政府は麻薬類食欲抑制剤として徹底的に管理している。乱用すれば、短期的には不眠症、動悸、口渇、焦燥感、頭痛、興奮などを起こし、長期間服用すれば、依存性、禁断症状とともに神経科的な問題、精神科的な問題まで引き起こす」

(つづく)

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News