【6月3日 Xinhua News】中国の北京大学(Peking University)が所蔵する古代の簡牘(かんどく、文字を記した竹札や木札)「北大秦簡」の研究成果が5月27日、「北京大学蔵秦簡牘(全5巻)」として上海古籍出版社から出版された。考古学者が10年余りをかけて研究、解読した成果をまとめており、戦国時代から秦始皇帝時代までの政治や経済、文化を解き明かしている。

 北京大学蔵秦簡牘は「睡虎地秦簡」「岳麓書院蔵秦簡」に続いて発見された重要典籍関連の秦簡牘であり、2千年にわたり失われていた書籍を多く収録する極めて貴重な歴史文化遺産となる。

 北京大学が香港の学術財団から秦簡牘の寄贈を受けたのは2010年で、竹簡10巻計762枚、木簡21枚、木牘6枚、サイコロ、算木などが含まれていた。書かれた時期は戦国時代末期から秦始皇帝時代で、筆跡ははっきりとしており、保存状態もよく、形式も多様だった。

 学術界は北京大学蔵秦簡牘について、過去に発見された秦簡と異なり、初めての発見となる内容が多く含まれると指摘する。それらには当時の人々が書いた散文や詩賦、「女性の徳」を論じた最古の文章、宇宙に対する仮説「三方三円」などがある。

 女性の徳を論じた「教女」は、後漢の班昭(Ban Zhao)が記した「女誡」より300年余り早い。古代の服飾文献資料「制衣」は初めての発見であり、秦代の服飾技術書の貴重なサンプルになる。秦代に行われていた宴席上のゲームを記した「酒令」には挿絵だけでなく、サイコロまで付属していた。

「算書甲種」の冒頭に書かれた「魯久次問数于陳起」は、対話形式で「三方三円」の宇宙モデルの仮説を示しており、中国の初期数学思想史の空白を埋めるだけでなく、重要な天文学的意義を持つ。

 北大秦簡は、同大考古文博学院の胡東波(Hu Dongbo)教授を中心とした文化財保護関係者と考古学関係者が研究し解読。竹簡から見つかった二つの表形式のカレンダーがそれぞれ始皇帝31(紀元前216)年と33(同214)年に当たることから、簡牘が書き写された時期を概ね戦国時代末期から始皇帝時代と判断した。考古学チームは当時の秦簡の所有者を秦の南郡(現在の湖北省<Hubei>)の地方官吏だと推測している。(c)Xinhua News/AFPBB News