【5月31日 AFP】英オックスフォード大学(Oxford University)の弁論団体が、性自認は生物学的な性に勝ることはないと主張する「ジェンダークリティカル」派フェミニストの哲学者・作家、キャスリーン・ストック(Kathleen Stock)氏を討論会に招いたのを受け、トランスジェンダーの権利活動家が抗議行動を繰り広げる一幕があった。

 討論会は30日、弁論団体「オックスフォード・ユニオン(Oxford Union)」が主催して開かれた。これに対し200~300人の活動家が、ストック氏の考えはトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)に当たるなどと抗議し、会場に向かってオックスフォードの街を行進した。

 ストック氏はサセックス大学(University of Sussex)の教授を務めていたが、ジェンダークリティカルな姿勢を同僚や学生に批判され、2021年に辞職した。自身はトランスフォビアではないと否定している。

 オックスフォード大の「LGBTQ+(性的少数者)ソサエティー(LGBTQ+ Society)」の代表は「憎悪と不寛容、さらにそれをオックスフォードに持ち込むというユニオンの決定に対抗する」と述べた。

 同大OBのリシ・スナク(Rishi Sunak)首相も討論会に参加。保守系紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)に対し、「自由な社会には自由な議論が必要だ」と語った。

 スナク氏は「他者の意見に耳を傾けなければならない。一部の声高な主張を受け入れて議論がなされなくなる事態を許してはならない」と主張。「賛否はさておき、ストック氏は今回の討論会の重要な出席者だ。学生たちが意見を聞き、議論することは認められるべきだ」と述べた。

 LGBTQ+ソサエティーの副代表は「ストック氏に発言の権利があることについては抗議していない」「言論の自由は言論の自由だ。われわれが抗議することも許されている」と語った。

 デモ参加者は「われわれの存在に議論の余地はない」「Trans Lives Matter(トランスの命は大切)」と書かれたプラカードを掲げ、「トランスパワー」などとシュプレヒコールを上げていた。

 活動家の一人は会場の床に接着剤で体を貼り付けて抗議。警察に排除された。

 ユニオンは主にオックスフォード大の学生で構成されているが、大学からは独立している。1823年の創設以来、著名な講演者を迎えて討論会を開いている。(c)AFP/Sylvain PEUCHMAURD