【5⽉30⽇ Peopleʼs Daily】北京大学(Peking University)人民病院西直門院区の周辺では何百メートルも続いていた車列が消えた。かつては行列して院内に入るまでに1時間余りかかったが、現在では10分ほどだ。

 近くの北京市西城区都市管理委員会内にある「総合交通管理補助意思決定システム」の大型スクリーンでは、病院周辺の交通運行状況や駐車・駐輪状況が一目で分かる。担当者はデジタルシステムを利用して各種交通の規則性と現状を把握し、現場に対して交通管理の提案を提供している。デジタルツイン技術の急速な発展と普及、応用は、都市の計画や建設、管理に新たな解決方法をもたらした。

 デジタルツイン都市とは、各種センサーなどから得た情報を使って現実の都市と同一の「仮想都市」をコンピューター内で再構築することだ。そのことで、現実に発生している問題などに対する「最適解」などを導き出す。

 中国ではデジタルツイン都市の建設が急ピッチで進行している。2022年の中国のデジタルツイン都市の市場規模は51億元(約1012億円)で、年間成長率は50%に達した。

 デジタルツイン都市を構築することは、都市管理者がより効率的に都市を運営することを可能にするとともに、都市の持続可能な発展のための環境を整えることにもつながる。

 山東省(Shandong)済南市(Jinan)では、地下鉄建設線など鉄道路線周囲の地質構造を表示することで路線の適合性分析を示す、四次元地質環境可視化情報システムが構築された。広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)では、都市運行管理中枢が水循環、気象、排水施設などのデータを利用して、3Dシミュレーションと電子地図を結びつけることで冠水の状況推移を可視化して、洪水対策や災害救助に役立てている。デジタルツイン都市は各地の必要に応じて、都市の管理運営や文化財の保護に役立っている。河北省(Hebei)雄安新区(Xiong’an New Area)ではデジタルツイン都市と現実都市が同時に計画・建設され、スマートシティーが出現することになった。

 デジタルツイン都市には課題も存在する。まず、データの種類と量が膨大であるために、システム側の対応能力が問題になる。デジタルツイン都市には、現実都市の状況をリアルタイムで把握し、問題に対して解決策をただちに提出せねばならない「宿命」がある。

 360グループの創業者である周鴻禕(Zhou Hongyi)氏は、都市のデジタル管理は「データの安全やプライバシー保護などの問題の『増幅器』にもなりやすい」と指摘する。都市全体の情報がネットワーク、ソフトウェア、データ上にあるからだ。周氏は都市のインフラ建設とデジタルセキュリティー能力を融合させねばならないと主張している。

 武漢大学(Wuhan University)の李徳仁(Li Deren)教授は、「未来に向けて新たな試練に積極的に対応し、物理空間とサイバー空間の共同建設を積極的に推進し、都市計画や改造・アップグレード、科学管理をしっかりと行い、中国の都市建設を、デジタルツインを真に実現するスマートシティーに向けて発展させるべきだ」と提案している。(c)Peopleʼs Daily /AFPBB News