【5月30日 AFP】ウクライナの首都キーウの防空を担うある隊長は、ミサイルやドローン(無人機)がレーダーに映るたびに責任の重大さを痛感する。迎撃できなければ、犠牲になるのは市民だ。

 これまでに迎撃したロシアの巡航ミサイルの中には、0.5トン近い重さがある弾頭を搭載したものもあった。

「アトラス」というコールサインのみを明かしてAFPの取材に応じた隊長(37)は「多くのことが、私と部下の肩にかかっている」と語った。

 ロシアによるウクライナ侵攻開始直後、アトラス隊長が軍に入隊したときには古びた機器しかなく、飛来するミサイルや無人機を見ながら無力感を味わっていた。

 しかし、フランスが供与した対空ミサイル「クロタル(Crotale)」の訓練を、本来なら4か月かかるところ1か月で終えた頃から、状況が変わり始めた。

 今年1月2日未明、標的を初めて迎撃したアトラス隊からは歓声が上がった。撃ち落としたのはイラン製の無人機シャヘド(Shahed)だった。「だが皆すぐに心を鎮めて、集中しなければならないと理解した。喜ぶのは後回しだと」

 アトラス隊はこれまで10機以上を迎撃してきたが、失敗は「とても辛い瞬間だ」という。

 軍当局は今月25日、首都および周辺に飛来したシャヘド36機を撃墜したと発表した。だが、ロシアの攻撃はやまない。翌日には東部ドニプロ(Dnipro)の医療施設がミサイル攻撃を受け、1人が死亡、23人が負傷した。

 ウクライナは5月上旬、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が「無敵」とうたった極超音速ミサイル「キンジャル(Kinzhal)」の迎撃に初めて成功したとも発表した。使用したのは、4月に供与された米国製の地対空迎撃ミサイルシステム「パトリオット(Patriot)」だった。

 だが、ミサイルを迎撃するだけでは、人命に対する脅威は完全になくならない。落下するミサイルの破片や弾頭も深刻な被害をもたらす恐れがある。

 アトラス隊長いわく迎撃する際には、残骸の落下地点もできる限り予測する。「(落下地点を)自分たちの近くに想定して撃墜するときもある。(居住地に)落ちたらとても危険だからだ」 (c)AFP/Joshua MELVIN