【5月30日 AFP】2019年にノルウェー沖でハーネスを着けた状態で発見され、ロシアのスパイとの疑いが持たれたシロイルカ(ベルーガ)がこのほど、スウェーデン沖に現れた。このベルーガを追跡している団体が29日、発表した。

 シロイルカはノルウェーでは「hval(クジラ)」という言葉と、ロシアから来たとされることを掛け「バルジーミル(Hvaldimir)」の愛称で呼ばれ、推定13~14歳とされる。

 最初に目撃されたノルウェー最北端フィンマルク(Finnmark)県沿岸の北極海から、同国の上半分の沿岸を3年かけてゆっくりと南下していたが、最近になり急にスピードを上げ下半分の沿岸沿いを移動し、スウェーデン領海に入った。

 29日にはスウェーデン南西部フンボストランド(Hunnebostrand)沖で確認された。

 バルジーミルを追跡している団体「ワンホエール(OneWhale)」の海洋生物学者はAFPに対し、スウェーデンは本来の生息地から離れており「なぜこれほどスピードを上げたのか分からない」と話した。

「ホルモンによって交尾相手を探すよう駆り立てられているのかもしれない。または、非常に社会的な動物なので、寂しくて他のシロイルカを探しているのかもしれない」

 バルジーミルはノルウェーでサケの養殖場の下に集まる野生の魚を食べて暮らしていた。スウェーデンでは餌を捕まえられないと懸念されており、すでに痩せ始めているという。

 バルジーミルは当初、体にハーネスが取り付けられており、ノルウェー漁業総局によって取り外された。ハーネスにはカメラ搭載用とみられる装置が付いていたほか、プラスチック製の留め具に「(ロシアの)サンクトペテルブルク(St. Petersburg)備品」と書かれていた。

 漁業総局は飼育施設から逃げ出した可能性があると指摘。人間に慣れていることからロシア海軍によって訓練されていたとみている。

 ロシア政府はこれまで、ベルーガの「スパイ」疑惑について、公式見解を出していない。(c)AFP