■「ウクライナのアイデンティティーを抹殺」

 人道支援団体などは、ウクライナ人住民によるロシアのパスポート取得は、ハームリダクション(危害削減)の一環だとする見解を示している。

 そうした団体の一つ、ドンバスSOS(Donbas SOS)のミハイロ・フォメンコ(Mykhailo Fomenko)弁護士は「大多数の人々が脅迫や暴力の影響下で(ロシアの)パスポートを受け取ったことは分かっている」としつつ、「すべてが終われば(ロシアの)パスポートは生活から消え、忘れ去られるだろう」と述べた。

 しかし、申請者が提出した指紋や写真、家族情報などはパスポートの発行後も長期間、ロシア側に残る。これはロシアの治安機関にとって好都合だ。

 そうした情報はロシア側の徴兵用の予備リストにもなり得る。専門家によれば、それはすでに起きている。

 またロシア側のパスポート発行は実生活への影響以外に、発行そのものが本質的に攻撃だとする見方もある。ウクライナの人権団体「ズミナ(Zmina)」の幹部は「ロシアはウクライナのアイデンティティーを抹殺しようとしている」と述べた。(c)AFP/ Joshua Melvin and Elizabeth Striy