【5月23日 東方新報】中国西部の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)にあるロプノル湖野生ラクダ国家自然保護区で最近、国家2級重点保護動物に指定されているヒグマの姿が確認された。赤外線カメラが撮影したもので、同保護区でヒグマが見つかったのは初めてだ。

 同保護区では野生動物を保護するため人の出入りを制限するなどの措置を取っており、2022年生物多様性保全プロジェクトにも選ばれている。野生動物の生活環境が大幅に改善され、ヒグマ以外にもユキヒョウやオオヤマネコ、ジャッカルなどがひんぱんに出現するようになっている。

 人類と自然の共生のあり方をめぐっては、「国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」の第1部が2021年に雲南省(Yunnan)昆明市(Kunming)を拠点にオンラインで行われ、2022年に第2部がカナダ・モントリオールで開かれた。自然と共生するため2020年までに取り組む世界目標「愛知ターゲット」を引き継ぎ、2030年までの世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。COP15のホスト国となった中国政府は、率先して目標を達成するよう力を入れている。

 その一方で、ヒグマによる「襲撃」も問題となっている。

 青海チベット高原には約5000頭のヒグマが生息。この数年、野生動物が家畜を襲う事案は6000件を超え、家屋の破壊は1000件余、人を死傷させたトラブルも14件を数える。

 特に被害が多いのは、新疆ウイグル自治区に隣接する青海省(Qinghai)だ。今年3月18日には青海省玉樹チベット族自治州(Yushu Tibetan Autonomous Prefecture)称多県(Chenduo)でヒグマが家畜のヤク2頭を殺害し、警察が出動。ヒグマは「獲物」のヤクを手放そうとしなかったが、警察の4時間にわたる「追い出し作戦」により、ようやく立ち去った。

 ヒグマが冬眠から目を覚ます早春は、高地の青海チベット高原ではエサを探すのが難しい時期。同自治州公安局森林警察は3月20日、ヒグマ出没に対する「警報」を発表した。

 人が動物の生活環境を破壊してきた状況を改善した結果、今度は人間の暮らしに危険が迫る事態に。人と動物の共生の難しさを象徴しており、地元政府は牧畜民や自然保護団体と協力し、人と野生動物の「すみ分け」対策を進めている。(c)東方新報/AFPBB News