【5月23日 AFP】米ハーバード大学(Harvard University)とタフツ大学(Tufts University)の研究チームは22日、白人の6割超に潜在意識レベルでの「暗黙の人種偏見」が認められるとする研究結果を公表した。

 研究結果は米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。

 同チームは6万人超の被験者を対象に、13種類の実験を実施。その結果、90%を超える圧倒的多数から「白人も非白人も等しく人間である」との回答が得られた。

 しかし、米国および他の国の白人の参加者は一貫して、「動物」に対比する「人間」という属性について、自らが属する白人と強く関連付けて認識していた。他の人種集団に関しては、それほど強い結び付きがあるとはみなしていなかった。

 黒人、アジア人、ヒスパニック系の参加者にはそうした傾向は見られず、自分たちも白人も同じ程度に「人間」と関連付けて認識していた。

■潜在連合テスト

 今回の研究は、1990年代に開発され、現在広く使用されている「潜在連合テスト(IAT)」を使って行われた。

 このテストは、黒人と白人、同性愛者と異性愛者など対になる二つの概念や、良い悪いなど二つの特性に対する連想の強弱について、被験者の反応スピードをコンピューターで判定する。公言をはばかられるような、あるいは意識レベルでは気付いてさえいないような態度が把握できるとされている。

 今回の全試験の結果、白人の参加者のうち、白人と「人間」を関連付ける一方で、黒人と「動物」を結び付けたのは61%、アジア人と「動物」を結び付けたのは68%に上った。ヒスパニック系についても同様の数値だった。

 参加者の年齢、宗教、学歴による回答結果の違いは認められなかったが、政治的信条と性別によっては違いが見られ、保守派を自認する男性で白人と「人間」を結び付ける傾向がやや強く示された。

 対照的に、非白人の間では、自らの人種を優位とみなす暗黙の偏見は白人ほど顕著に見られなかった。ただし、自らの人種以外の非白人集団と白人との対比では、白人をより人間的とする傾向があった。

■社会的ヒエラルキー

 論文の筆頭著者を務めたハーバード大博士課程のカースティン・モアハウス(Kirsten Morehouse)氏は結果について、米国における白人の社会的・経済的優位性が背景にあると分析している。

 同氏は、すべての人種において自らの「内集団」を優位とする傾向があると思われがちだが、白人以外の集団においては、米国社会での地位の相対的な低さからそうした認識は打ち消され、全般的に中立的な認識が生じているのではないかと語った。

 また、白人以外の人種が自分たち以外の非白人と白人を評価した場合、白人を優位とする偏見が見られたのは、「こうした社会的ヒエラルキーがいかに強力かを示している」と指摘した。

 モアハウス氏は、一部の人にとっては不快な結果かもしれないが、ステレオタイプ的な見方からの脱却に向け、有効な第一歩になると述べた。

 実験で使用されたのと同様のテストは、ハーバード大学のインターネットサイトで受けることができる。(c)AFP/Issam AHMED