【5月22日 AFP】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は21日、広島で開催された先進7か国(G7)首脳会議(サミット)を利用しての外交攻勢を終え、新たな武器・弾薬供与の約束や、G7からの「揺るぎない」外交支援を取り付け、帰国の途に就いた。

 ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領からは、F16を含む高性能戦闘機のウクライナへの供与と、同国軍操縦士の訓練への支持を取り付けた。さらに、3億7500万ドル(約516億円)規模の軍事支援も新たに得た。

 今回のサミットは、ロシアによるウクライナ侵攻への非難をほとんど表明していない新興国の首脳と会談できる貴重な場にもなった。

 サミット拡大会合への招待国インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は、ゼレンスキー氏に対し「あなたの苦しみとウクライナ国民の苦しみはよく分かる」「解決に向けて、わが国も私個人としても、できる限りのことをしていく」と約束した。

 今年のアフリカ連合(AU)議長国で、同じく招待国のコモロのアザリ・アスマニ(Azali Assoumani)大統領はAFPに対し、各国首脳との会談でゼレンスキー氏が自国の苦難について話す際、「感情的になる」場面もあったと振り返った。

「われわれは(ウクライナにおける)戦争を非難し、ゼレンスキー氏を支持した。私自身、心から彼の勇気に敬意を表した」と述べた。

 しかし、やはり招待国のブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領には外交攻勢も及ばず、会談は実現しなかった。

 拡大会合に出席したルラ氏は「ウクライナの領土保全の侵害」を非難し、「対話」を呼び掛けた。

 一方で、国連安全保障理事会(UN Security Council)の常任理事国について「領土拡大や体制転覆を狙って承認を経ずに戦争を仕掛けるという伝統を維持している」と批判。米国主導のイラク戦争などを示唆したものとみられる。同大統領はウクライナでの紛争について、西側諸国が「戦争を後押ししている」と発言したこともあった。

 ゼレンスキー氏は、ルラ氏との会談が実現しなかったのはスケジュールの都合と説明。記者会見で落胆しているかと聞かれたのに対し、「がっかりしているのは彼(ルラ氏)の方だと思う」と答えた。

 ゼレンスキー氏はこの日、岸田文雄(Fumio Kishida)首相と共に原爆死没者慰霊碑に献花。その後の会見では、ウクライナ東部の激戦地バフムート(Bakhmut)が「(原爆資料館で見た)広島の写真に似ている」「完全に破壊され、何もない。人もいない」と述べた上で、広島のようにウクライナも復興すると強調した。

 バフムートをめぐっては、ロシア軍が市内に進軍していることを認めながらも、陥落は否定した。(c)AFP/Sara HUSSEIN / Katie Forster