中国で生活苦から「子どもを売る」 カエルたちの物語
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【5月19日 東方新報】怒られてしょんぼりするカエルたちの様子が中国のネットやメディアに取り上げられ、人びとの同情を集めている。カエルを守るためにルールの適用を柔軟にすべきだとの声も上がっている。
もちろん怒られてしょげるのは本物のカエルではなく、カエルの着ぐるみを着た人間。中国では最近、カエルの着ぐるみ姿でビニール製のカエルのおもちゃを売る商売が流行し、上海など複数の都市に広がっていた。とぼけた表情の着ぐるみのカエルがスマホ決済用のQRコードを首から下げ、手にした竿(さお)にたくさんのカエルのおもちゃをぶら下げている様子はなんともコミカルだ。
そんな愛嬌(あいきょう)のある姿にもかかわらず、彼らは「子売りカエル」と呼ばれている。カエルのおもちゃは「自分のかわいい子どもたち」という設定らしい。「生活が苦しくなければ、誰が自分の子を売ろうなどと思うのか」などという宣伝文句のユーモアもウケて、ネット上でバズっていた。
そんな「子売りカエル」たちには生活苦以外の試練も訪れた。
「子売りカエル」の本質は路上販売。違法行為に当たる場合がほとんどだ。実際に、屋台の取り締まりなどを担う「城管」と呼ばれる当局者に摘発されるカエルたちが相次いだ。城管に追いかけられて、「子どもたち」を抱えて全速力で逃げるカエルや、おしかりを受けて壁に向かってしょんぼりとうなだれるカエルたちの様子がネット上で次々と明らかになった。電動バイクに乗っていた浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)のカエルは、着ぐるみは着ていたもののヘルメットをかぶっておらず罰金20元(約392円)の支払いを命じられた。
罰せられるカエルたちの様子は、あくまでもコミカルで、大なり小なりの違反行為があったとはいえ、どこか憎めない。その上、「我が子を売っている」のは宣伝文句にすぎないにしろ、日々の生活のためになんとかお金を稼ごうとしている必死さが伝わってくる。日暮れの街で着ぐるみのまま高級店のショーウインドーに見入っているカエルの姿には、涙さえ誘われる。
人びとは、世知辛いこの世の中にあって、和みを与えてくれる存在となったカエルたちに同情的だ。カエルたちをとがめるよりも、画一的なルールを適用しようとする取り締まる側をたしなめる声が上がる。新たな商売という観点からも「無闇に排除すべきではない」という意見もある。公共の利益と矛盾しないようにカエルたちの活動の場所や時間をきちんと決めればいいなどというアイデアも提唱される。何とかカエルたちを守り、「絶滅」から救おうとしているのだ。
カエルの敵役として白い目で見られるようになってしまった上海の城管の幹部は、「子売りカエルは、公共のスペースでの屋台や物品販売を禁止する市の条例に違反している」としたものの、「彼らの違反行為の社会的影響は比較的小さく、指導や警告をした上で問題を起こさなければ基本的には処罰しない」という見解を示す結果となった。
見た目がかわいいからといって違反が許されるわけではないが、カエルたちの奮闘ぶりは、しばしば硬直的に運用されがちな法律やルールが本来、誰のためにあるのかということを改めて考えせるきっかけにもなっている。(c)東方新報/AFPBB News