【5月20日 東方新報】コロナ禍が明けた中国ではゴールデンウイーク(労働節連休、今年は4月29日~5月3日)に多くの人が旅行を楽しんだ。そんな中、「搶占老年旅遊団(シニアツアーに潜り込む)」という言葉がSNSの検索ワード上位に上った。ツアー価格が手頃な上、高齢者との旅で新しい発見があるという。

 30歳の朱琪(Zhu Qi)さんは手軽な旅行をしようとシニア向けツアーに申し込んだ。約50人の客で彼女以外は両親と同じくらいのメンバーだった。同年代との旅行なら移動中はスマホを見ながら静かに観光地へ向かうものだが、オジサマ、オバサマたちは最近のニュースの話題や市場での値切り術、ちまたの笑い話など、おしゃべりを続けていた。

 一人だけ若い朱さんはみんなの人気者となり、「おなか、すいてるでしょ?」と食べ物やおやつを次々と渡された。シニア向けツアーは余裕のある時間で移動するため、途中の景色もじっくり楽しめた。朱さんは「これまでの旅とは違う感覚を味わいました」と喜んでいる。

 シニア向けツアーはゆったりした行程でスケジュールを詰め込まず、食事がついていない場合が多い分、ツアー価格が比較的割安なことが多い。そのため、知らずに申し込む若者も少なくない。

 旅行好きの張雪(Zhang Xue)さんは友達と四川省(Sichuan)の観光地・九寨溝(Jiuzhaigou)ツアーを予約したが、当日になって自分たち以外はほとんど高齢者であることが分かった。(これは楽しめそうにないな…)。当初はそんな不安がよぎったが、現地のチベット族と交流する企画では高齢者たちが率先して打ち解け、歌や踊りで大いに盛り上がった。無邪気なお年寄りたちのかわいらしい笑顔に、張さんは涙が出るほど感動したという。

 中国では若者の間で「社恐(対人恐怖症)」という言葉が広まっている。人付き合いが得意ではない、もしくは好きではなく、社会人になっても上司やお客さんとのコミュニケーションが苦手なタイプが増えている。そんな中、「シニアツアーで新しい体験ができた」という書き込みが増えていることから、「シニアグループは若者の社恐を治療してくれる」とまで言われるようになった。

 少子高齢化が進む中国では、高齢者層を対象にした旅行プランが増えている。こうしたツアーはシニアたちを喜ばせるだけでなく、若者のハートを変える思わぬ副産物ももたらしている。(c)東方新報/AFPBB News