【5月19日 東方新報】「去年、買った時は500元(約9815円)ぐらいだったと思います。でも、今年は人が多いですね。600元(約1万1788円)ぐらいになっているのに」

 こう話すのは今月、北京中心部にある金製品を扱うアクセサリーショップを訪れていた男性。金額は、アクセサリーに使われる金1グラムの値段だ。

 北京市内の別店舗の店員によれば、1グラム550元(約1万796円)を突破した後、価格の上昇が勢いづき、今や580元(約1万1385円)を突破。1日でグラム当たり7元(約137円)上がったこともあったという。

 金は世界的に価格の上昇が続いており、影響は中国にも例外なく及んでいる。価格高騰にあっても、中国の人たちの金の購入意欲は衰えない。買い控えるどころか、「このまま値上がりが続くのではないか」と心配し、むしろ急いで手に入れようと考える人も多いようだ。

 ワールドゴールドカウンシル(WGC)の報告によれば、2023年第1四半期の金製アクセサリーの消費量は世界全体で478トン。うち4割以上の198トンが中国での消費で前年同時期の11%増、前の四半期に比べ56%増えた。

 その理由として、中国経済の回復によるリベンジ消費もさることながら、コロナ対策の緩和で結婚式が増え、金製装飾品の需要が増えたと指摘されているのは、いかにも中国人らしい。

 金の指輪やネックレスなどは年配好みというイメージが強いが、最近では若者の関心が高まっているという。

「多くの若者が、消費者と投資家という二つの立場を兼ねるようになっています。アクセサリーとして身につけて楽しむと同時に、価値の維持や値上がりにも期待しています」。宝飾大手、夢金園黄金珠宝集団(Mokingran)の王国鑫(Wang Guoxin)副社長はそう指摘する。

「若い消費者にとっては見た目が重要です。今は、金は伝統的で古くさいというステレオタイプのイメージとは違い、さまざまなスタイルの製品を選べ、ファッショナブルになって、コーディネートのポイントになっています」

 人びとを金の獲得に駆り立てる価格高騰はいつまで続くのか。専門家は「今後も金の高値が続く条件はそろっている」と指摘する。

 国営・中国黄金集団(China Gold)の元首席エコノミスト万喆(Wan Zhe)氏は、ウクライナでの戦闘を含めた世界的な政治的分断による国際政治上のリスク、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ、インフレや相次ぐ銀行破綻による金融危機の行方などを挙げた上でこう述べる。

「これらの面から政治経済から見ると、リスク回避傾向はある程度続くと言えるので、金の価格を支える条件はあると思います」

 中国での「ゴールドラッシュ」はしばらく続きそうだ。(c)東方新報/AFPBB News