【5月28日 AFP】カトリック教徒が多数を占めるポルトガルでは、安楽死の問題が世論を二分してきた。治る見込みがない病や緩和できない苦痛を抱えている人への安楽死を認める法律が今月、成立した。

 安楽死・自殺ほう助に関する法律について、欧州諸国の状況をまとめた。

■世界初はオランダ

 オランダは2002年4月、治る見込みがない病に苦しむ患者に医師が致死量の薬物を投与する「積極的安楽死」を、世界で初めて認めた。

 自殺ほう助も合法とされ、患者は自発的な意思で命を絶つ場合、支援を受けられるようになった。

 患者が「改善の見込みがない耐え難い苦痛」を抱え、「自発的に熟慮し、完全に確信して」死を望んでいることが条件付けられている。

 政府は12年、極度の苦痛を強いられている12歳以上の患者について、保護者の同意があれば安楽死を認めるよう適用範囲を拡大した。さらに20年には、重度の認知症患者にも、患者本人が判断能力を有しているうちに要求していた場合に限り、安楽死を認めた。

 今年4月には、「耐え難い苦しみを強いられ、希望のない」1~11歳の子どもの安楽死を認めることを閣議決定した。

 政府の統計によると、22年に安楽死を選んだ人は約8700人で、大半は末期がん患者だった。

■ベルギー・ルクセンブルク・スペイン

 ベルギーは02年5月、世界で2番目に安楽死と自殺ほう助を認めた国となった。いずれもオランダと同様の条件を設けている。

 14年にはオランダよりさらに踏み込み、保護者の同意を条件に、末期症状の子どもを対象とする場合の年齢制限を撤廃した。

 ルクセンブルクは09年に、スペインは21年6月に安楽死と自殺ほう助を合法化した。

■自殺ほう助希望者の最終目的地、スイス

 スイスは「積極的安楽死」は禁止しているが、自殺ほう助は数十年前から認めており、自身の苦痛を終わらせようと支援を求める患者が欧州各地から集まって来る。

 いわゆる「自殺ツーリズム」の増加に伴い、さまざまな議論が行われたが、当局は11年、自殺ほう助を規制しない方針を決定した。

 カトリック教徒が多いオーストリアでも、自殺ほう助が違法なのは国民の基本的人権の侵害に当たると憲法裁判所が判断し、22年に合法化された。

 一方、イタリアの憲法裁判所は、自殺ほう助の合法化の是非をめぐる国民投票の実施要請について、国民投票では弱者を守れないとし、却下した。

 ただ、「耐え難い」肉体的・心理的苦痛をもたらす、治る見込みがない患者の自殺ほう助に関しては、場合によって処罰の対象外とする判断を下した。

 英国では、安楽死をめぐる問題が国民の間で強い関心を呼んでおり、議会は自殺ほう助の合法化について検討を進めている。(c)AFP