【5月16日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が、同国史上最高峰と評される中世のイコン(聖像画)をロシア正教会に譲渡したことが分かった。モスクワ総主教庁が15日、明らかにした。

 プーチン氏が譲渡したのは、中世ロシアの画家アンドレイ・ルブリョフ(Andrei Rublev)の最も有名なイコン「至聖三者(Trinity)」。

 モスクワ総主教庁によると、プーチン氏は「ロシア正教会信者から寄せられた多くの要請を受けて」譲渡を決めたという。

 多大な権力を持つロシア正教会の最高指導者キリル総主教(Patriarch Kirill)は、ウクライナ侵攻を支持し、信者にも侵攻支持を呼び掛けている。

 このイコンは、1917年に社会民主労働党ボリシェビキ派(Bolshevik)が主導したロシア革命の後、1929年から国立トレチャコフ美術館(Tretyakov Gallery)が所蔵していた。

 美術専門家らは今回の譲渡を批判し、適切な保管が可能な同美術館にとどめるべきだとしている。

 ロシア軍がウクライナで後退を強いられる中、当局は侵攻に宗教的な意味合いを持たせようと模索しており、前線の兵士の士気高揚を目的に正教会の司祭数十人を前線に派遣している。

 キリル総主教は昨年9月の説教で、ウクライナで戦死すれば「犯した全ての罪は洗い流される」と発言した。(c)AFP