【6月17日 AFP】パキスタン・ラワルピンディ(Rawalpindi)の賑やかなバザール(市場)で、新鮮なトカゲの脂肪をサソリのオイルと香辛料で炒めた「媚薬(びやく)」が売られている。もちろん、焦げたフライパンの匂いがする黒っぽい薬には、科学的根拠は皆無だ。

 薬には、密猟された絶滅が危惧される「インドトゲオアガマ」が使われる。無残にも路上で切り刻まれ、簡素なガスコンロではらわたが調理される。

 ラジャ・バザール(Raja Bazaar)の媚薬売りの一人、ヤシル・アリさん(40)はAFPに「問題のある箇所に5滴垂らして、マッサージする」と使い方を説明した。「魔法のように精力が増強される」

 集まった客にアリさんは、「喜びと幸福」をもたらす解決策で、「鋼のように強くなる」と媚薬を売り込む。

 媚薬を30年間愛用しているという62歳の男性は「奇跡のような効果がある」と強調し、自分の精力について生き生きと語り始めた。

■トカゲ狩り

 パンジャブ(Punjab)州とシンド(Sindh)州の平原に生息するインドトゲオアガマはおとなしく、最大60センチほどまで成長する。

 密猟者はインドトゲオアガマが日光浴をするために巣穴から出てきたところを捕まえる。

 首都イスラマバードの南20キロにある村アディアラ(Adiala)に住むムハンマド・ナシルさん(25)の一族は4代にわたりトカゲ狩りをなりわいにしている。

 夜明けと共に、村を囲む平原に釣り糸で作ったわなを仕掛けに行く。「捕まえたらトカゲの背骨を折る」「弾丸のような速さで動くので、確実に逃さないためだ」

「トカゲを狩り、命を奪うことに胸が痛くなる時もある。だが、こうして生計を立ててきた」と語った。

 パキスタンでは夫婦に子だくさんを求める社会的圧力が強く、不妊は極めて不名誉なこととされている。勃起不全(ED)の治療薬バイアグラ(Viagra)は法律で禁じられていることから、いんちきな民間療法が根強い人気を保っている。

 だが、イスラマバードの臨床医アフマド・シャハブ氏は、トカゲ製媚薬の製造・販売は、極めて保守的で性的な話題がタブーとされていることに起因する人々の無知に付け込んでいると指摘する。

「全くのいんちきで、トカゲの油の効用の根拠は皆無だ」とシャハブ氏。「教育により国民の意識を変えなければならない」