【5月17日 CNS】中国科学技術大学(University of Science and Technology of China)のロボット化学者研究室では、重量200キログラム以上でありながら、機敏な動きをするロボット「小来」が十数台の作業台の間を行き来し、フェントン触媒の関連研究に忙しく従事している。

 中国科学技術大学物理化学科の江俊(Jiang Jun)教授は、ロボット化学者の「小来」は人間と比べてもより高い精度を持っていると説明している。

 紹介によると、この「ロボット化学者」は、同大学の羅毅(Luo Yi)・江俊のチームが8年間の研究を経て開発したもので、化学ブレイン、ロボット実験員、そしてスマート化学ワークステーションの三つの部分から構成されているという。その中心となる「化学ブレイン」は、大量の化学実験と理論データの分析により、ナレッジグラフを構築し、文献の読解、化学実験の設計、自己最適化の能力を可能にし、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)システムも備えている。

「これは、文献読解、実験設計、自己最適化、化学品開発全プロセスを覆す世界初のロボット化学者プラットフォームだ」と、江俊教授は述べた。

 近年、新たな科学技術革命と産業変革が急速に進展している中、「人工知能(AI)+ビッグデータ」による研究パラダイムの変革の促進」というテーマが注目を集めている。中国科学技術大学の研究チームなどが精密スマート化学分野に深く関わり、研究パラダイムの変革を推進している。

 業界の専門家は、「ロボット化学者」の成果が化学研究を知識理解のデジタル化、操作指示化、クリエイティブ・製造のスマート化の未来の方向に導いているとし、化学科学に大きな影響を与えると考えている。

 中国科学院精密スマート化学重点実験室主任の李震宇(Li Zhenyu)教授は、データ駆動の精密化学研究の新しいパラダイムを確立することが、社会的環境、経済発展、および化学学科の発展の急迫した要求だと考えている。

 ロボットに「化学的知恵」を与えることで、精密スマート化学に積極的に活用する未来を迎える。中国科学技術大学の研究チームは、一連の研究開発を通じ、「ロボット化学者」を2030年までにクリエイティブ的な「知恵をもつ科学者」とすることを計画している。人間の科学者の創造性を模倣学習するだけでなく、物質科学のデジタル知識体系を構築し、科学的課題の解決をリードすることができるようにする計画だ。

 李震宇教授は、「私たちは世界トップクラスの精密スマート化学分野の研究機関を構築し、新たな精密スマート化学パラダイムを形成したい」と述べ、「2030年までに、人間の科学者とロボット化学者がCO-PIで協力し、科学計画を共同で議論し、人間とロボットがシームレスに協力できるようになることを期待している」と述べた。(c)CNS/JCM/AFPBB News