【5月26日 AFP】オーストラリアの生態学者らが、カンガルーの増加を放置すれば「壊滅的」な数の個体が餓死する可能性があるとして、カンガルー産業全体で大規模な殺処分を行うことを提案している。

 カンガルーの個体数は増減のサイクルを繰り返し、餌が豊富な雨期には数千万頭に膨れ上がる。しかし、生態学者のキャサリン・モズビー(Katherine Moseby)氏は、餌がなくなれば餓死による大量死が起きると警告する。

 同氏によると前回の干ばつでは、飢えたカンガルーが公衆トイレのトイレットペーパーを食べたり路上で倒れたりした。推定80~90%が死んだ地域もあったという。

 こうした運命からカンガルーを救う最も思いやりのある方法は、銃で撃ち殺すことだとモズビー氏は主張する。

 オーストラリアでカンガルーは保護されているが、最もよく見掛ける種は絶滅の危機にはなく、政府の許可があればほとんどの地区で撃ち殺すことができる。その結果、年間500万頭が食肉やペットフード、皮革産業などで利用されている。

 オーストラリア・カンガルー産業協会(Kangaroo Industry Association of Australia)のデニス・キング(Dennis King)氏によると、2000年代初めの干ばつでカンガルーの個体数は3000万頭以下まで減ったが、今は再び増加傾向にあり、このままでは6000万頭まで回復するのも時間の問題だという。

 豪動物愛護団体アニマルズ・オーストラリア(Animals Australia)は、オーストラリア固有の動物であるカンガルーが「商業的利益のために殺されている」と非難している。

 だが、カンガルー管理の第一人者であるジョージ・ウィルソン(George Wilson)氏は、殺処分して利用することを「倫理に反するという意見もあるが、餓死させることこそ倫理に反する」とAFPに語った。「残酷なのはそういう事態に対して何もしないことだ」 (c)AFP/Steven TRASK